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「あれがすべて」尖閣事件“sengoku38”こと一色正春は今

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民主党政権時代の2010年秋、尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁巡視船に衝突する動画が拡散される騒動があった。この映像を神戸市内のインターネットカフェから拡散させたのが、一色正春だった。

一色正春は、本来、大勢の目に触れるはずのないこの動画をネット上に拡散させる際に、「sengoku38」と名乗った。当時の官房長官、仙谷由人にかけてのネーミングかと騒がれたが、やがて動画を流出させた当事者が判明、神戸の第5管区海上保安本部所属の現役海上保安官だったことが明らかになる。

第5管区海上保安本部に勤務していた関係者が当時を振り返る。

「動画が流出してすぐ、うちの人間だと思いました。もちろんそれが誰かは分かりません。なかには『よくやった』という声もありましたね。でも、うちの管区の者だと分かってからは、そんな空気も一変しました。こういう組織です。騒動に巻き込まれることを嫌いますからね」

関係者によると、「動画を流出させたのは自分だ」と名乗り出た一色正春は、その日から国家公務員法違反の疑いで任意での事情聴取が行われた。

「あくまでも任意での取り調べです。特に厳しく調べたわけではないはずです。仲間を調べるのですから、むしろ、取調官のほうがプレッシャーがかかったでしょうね」(第5管区本部関係者)

一部からは“英雄”扱いされた一色正春だが、国家公務員法違反容疑で書類送検された。その後、検察は起訴を猶予し、事件は終結している。

海上保安官としては停職12カ月の処分を受けるが、処分日に辞職。一民間人となった。

一色正春は辞職にあたり、「政治的意図はなく、私利私欲に基づくものではない」と強調。一連の行動について後悔はしてないと話していたという。

一海上保安官から“取り調べられる立場”へ。そして一部からの“国士”としての扱い――。辞職後は時折、メディアに寄稿しているのを目にする。その一色正春にコンタクトを取ってみた。

「やったこと、あれが全てです。とくにお話しすることはありません」

自信に満ちた声で応えるが、それ以上は、いくら食い下がっても、「いいです(結構です)」と繰り返すだけ。

あの人は今、みたいで、嫌です」

ついぞ詳細を語ることはなかった。

たこ焼き屋をしている?

「辞職後はメディアへの寄稿や講演をされていると聞いています。それ以外にも自営業というか、お店をされていると聞いています。実際、辞職時に彼は『たこ焼き屋さんをする』と話していたそうです。店の名前は『takoyaki38』にするという本気とも冗談ともつかない話も耳にしました」(第5管区関係者)

辞職後は「中国の狙いは尖閣だけではない」という論文で、アパグループ第5回「真の近現代史観」懸賞論文で最優秀藤誠志賞を受賞。著書に「何かのために sengoku38の告白」(朝日新聞出版)などがある。(ジャーナリスト・秋山謙一郎)


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