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不倫

不倫(ふりん)とは、古来より多くのが経験し、人生を豊かにしてきた究極の純愛のことである。

歴史

古来より不倫は存在した。もっとも、多くの国、文化圏において、一夫一婦制は存在しなかったことから、不倫というまどろこしいものではなく、富や権力を持つは当然のように公然と複数のを娶った。現在の日本の考えに沿えば、例えばスカルノ第3夫人であるデヴィなど完全に不倫相手である。また、男性に限ったことではなく、ロシアの女帝エカテリーナ2世は、生涯20人を超える愛人がいたと言われている。

日本においても、江戸時代には吉原が不倫文化を育んだ。吉原はしばしば現代のソープランド街に相当するものと思われているが、これは大きな誤解である。ソープランドは性行為のみが目的であるが、吉原の高級遊女は擬似恋愛が仕事であった。そのため、三味線や踊り、囲碁などに長け、古典の知識などの教養があり、機転の利く女性しか花魁にはなれなかった。また、きらびやかな花魁は、単なる性の対象ではなく、流行の発信者でもあり、女性からも一種の憧れを持って見られる存在であり、地位も高かったのである。そんな花魁は必ずしも客と情事に至るとは限らず、知的な会話で客の心を掴んでいた。馴染みの客となれば彼女たちと行為に至るが、その後は明け方までともに過ごすことが常であり、性行為が終ってそそくさと帰るソープランドとは大きな違いがあった。さらには、お互い惹かれあった結果、客と遊女が情死することもあったと言う。このように、吉原のは、客にとって単なる性の対象ではなく、不倫相手だったのである。もっとも、吉原では客がさらに別の遊女に通うこともあったようだが、これは浮気と見なされ、もともと通っていた遊女に詫びを入れる必要があったようだ。吉原がただのソープランドでないこと、そしてどこまで行っても浮気・不倫は存在したことを如実に示している。

近代になると吉原の文化も廃れてくる一方で、愛人、二号さんという言葉が生まれる。不倫はの甲斐性とされ、以外の女性の相手もできるは尊敬の対象にもなった。今でもヤクザの世界では、幹部は複数の愛人を囲うことがステータスであり、また地方の構成員は、幹部が来た際に一夜のを供することがお決まりになっている。

不倫する人間

上述の通り、不倫できるのは地位や権力、富や能力のある者に限られる。現に不倫をする男性は同世代に比べて出世しやすいと言われている。実際、現代社会において長く不倫を続けるには、ある程度の資金があり、スケジュール管理がしっかりしており、相手の気持ちを慮る余裕と思いやりがあり、上手くいかないときにはじっと耐え忍ぶ我慢強さがなければいけない。そのうえで、多くの障害を乗り越えてなお付き合いたいと相手に思わせるだけの人間的魅力が備わっていなければいけないのだ。そのような者が出世するのは当然と言えよう。

昔から「英雄色を好む」と言われるが、長期間にわたってそつなく不倫をするのは英雄然とした男性が多い。あるいは同じ女性からの憧れの対象となる、美しく自立した女性が多い。不倫をするということは精力がみなぎっているということでもあり、彼ら彼女らは輝いて見えるのであろう。

文化

不倫と言えば、石田純一の「不倫は文化」発言は有名である。もっとも、正確には「文化や芸術は不倫から生まれることもある」という発言だったようだ。事実、不倫から生まれる文化、芸術は数多い。

小説においては、近年では渡辺純一の「失楽園」が名高い。この作品は300万部を売り上げ、映画化作品も大ヒットした。1983年から1985年にかけて放送されたテレビドラマ「金曜日の妻たちへ」も社会現象化した。テーマ曲である小林明子の「恋におちて」も当然不倫を歌ったものだが、やはり大ヒット曲となった。音楽では、例えば高橋真梨子の「ごめんね…」が不倫を歌ったものとして有名だが、同曲は1年近くにわたりオリコンチャートにランクインし、40代、50代の女性を中心に強い支持を得た。また日本で最もCD売り上げの多いミュージシャンであるB'zは、不倫をテーマとする曲が多数あり、中でも「キレイな愛じゃなくても」や「もう一度キスしたかった」などはファンが多いが、どちらも不倫の曲である。同様に、1990年代以降多くのヒット曲を飛ばし、圧倒的な支持を得続ける福山雅治にも、「ながれ星」や「はつ恋」という不倫の曲が支持を得ている。これらは、不倫を題材とした作品は人々の心を掴んでいることの何よりの証拠である。

不倫の実態

不倫は一般に隠れて行うものであり、長続きするカップル(上述のように彼ら彼女らは聡明である)はなおのこと、不倫していることを口外しない。したがって、不倫というのはごくまれにしか存在しないものと思われていた。しかしインターネットという匿名での情報発信手段が普及すると、不倫は決して珍しいものではないことが明らかになってきた。例えばYahoo!が配信した「月刊チャージャー」というウェブマガジンの調査によれば、既婚男性の約35%は不倫を経験している。それ以外にも、大手ウェブサービス会社や報道機関、その他信頼に足る者が調査した複数のネット調査によれば、おおむね成人男女の2~4割は不倫を経験している。また、不倫経験はないものの、興味がある者も多いことが分かっている。

それでもなお信頼できない者は、世の中にかくもラブホテルが多く存在することを考えてみるとよい。都心の若い独身男女は、どちらか一方もしくは両方が一人暮らしをしていることが多く、カップルのほとんどはラブホテルではなく自宅でセックスをする。田舎のカップルは家族と暮らしていることが多いが、彼らは家が広く、また離れもあったりするため、家族の目を気にすることなく、やはり自宅でセックスをする。つまりラブホテルは、自宅ではセックスができない不倫カップルが利用するからこそ経営が成り立っているのである。

もっとはっきりと不倫の多さを実感したければ、深夜の隠れ家的なバーに顔を出してみるとよい。30代、40代の多くの男女が、あるいは年の離れた男女が、年甲斐もないほどに親しげにグラスを合わせている。どんなに鈍感でも、彼らが独身カップルや夫婦でないことは直観的に分かるだろう。

不倫のタイプ

不倫にも様々なタイプがある。出会いのパターンとしては大きく3パターンに分けられる。一つは出会い系サイト、SNSといった専用のネットサービスを利用したものだ。出会うまで匿名性を確保することができると同時に、お互いが同じ目的で相手を探しているということから、不倫特有の危険が大幅に低減され、しかも効率的であるという大きな利点がある。2つ目は、職場やサークルなどのコミュニティ内での関係から始まる不倫である。こちらは周りの人に勘付かれやすいという欠点はあるが、その反面、周りの目にさえ注意すれば普段から逢いやすくストレスが溜まりにくいという利点がある。そして3つ目は、元カレや元カノ、あるいは同窓会で再開した人との不倫である。とくに3つ目に関しては、mixiやFacebookといったSNSにより、同窓生や元交際相手と繋がる機会が劇的に増えたことに伴い、近年では不倫開始の定番となってきた。2つ目の場合でも、携帯電話・スマートフォンの登場、さらにフリーメールやLINEの活用で不倫しやすくなっていることは事実である。ネット社会では不倫の機会が大幅に増えていることは事実であろう。

もう一つ重要な点は、一方が未婚(交際者なし)か、双方が既婚(交際者あり)かという分類である。前者については、上司に当たる既婚男性とその部下の未婚女性といった関係が、典型例と考えられてきた。しかしこのような関係は、知らず知らず職場にも影響を及ぼすということに加え、未婚側が「結ばれない恋愛」に辛さを感じることや、男性の妻に嫉妬することなどから、多くの場合は不幸な形で破綻していた。近年では、既婚女性と未婚男性の不倫も増えてきており、お互い割り切った不倫により長続きすることも多いようである。一方、既婚者(または交際者がいる者)同士の不倫は、「ダブル不倫」と言われている。お互いが同じ立場であることから、軋轢を生みにくく、また不倫のリスクを自覚している者同士であることから、交際には細心の注意を払う。そのためダブル不倫は長続きする傾向がある。そしてネット社会で増えているのがこのダブル不倫なのである。

究極の純愛

不倫でない恋愛は、結婚をはじめとする二人の将来のこと、あるいは見栄や打算が付きまとう。しかし不倫、とくにダブル不倫の場合、将来を考える必要がない。単純に相手のことが好きという気持ち、惹かれあう想いだけで成り立つ関係である。このことから、不倫は究極の純愛と言われることがある。

不倫は火遊びであり一時の気の迷いという認識も、過去のものとなりつつある。最近では「セカンドパートナー」と呼ばれるプラトニックな不倫も増えている。彼ら彼女らはキスすらせず、心の繋がりを何よりも大切にするため、浮気(浮ついた気持ち)ではなく本気でお互いの人間性に惹かれあっているのである。また、不倫相手に「ソウルメイト」という言葉が使われることも増えつつある。

中年男性と若い女性というステレオタイプも過去のものだ。たしかに中年男性と若い女性は、性欲が最高潮に達する世代からずれており、肉欲的な若年男性や中年女性にはないロマンチックな恋をできるから相性が良いと言われていたが、昨今の不倫はそのような単純な性欲だけで説明できるものではない。心の繋がりが重視される現代の不倫関係では、一緒に歳を重ねていけることが重要であり、たとえば40代の男性ならば40代の女性を求めているのである。特に40代というのは、仕事や家庭、子育て、健康などで何かと問題が生じてくる世代である。そんなとき、心の支えは不倫相手という場合がままあるのだ。自暴自棄になったり自殺を企てたとき、不倫相手の存在で踏みとどまったという例すらある。不倫体験記などを読むと、こんな言葉がしばしば登場する。人生を救う不倫もある。

不倫はいけないこと?

我が国において、不倫はいけないこととされているが、それでも上述のように多くの人が不倫を経験する。実は不倫が悪いことという価値観自体、婚姻制度を守りたいという守旧派のプロパガンダに過ぎない。合理性を重んじる戦後社会において、合理的でない姦通罪がまず廃止され、さらに21世紀に入り、非嫡出子の相続割合が嫡出子と同等となったほか、離婚後300日問題も改正の動きがある。いずれも不倫に有利に働いていることに間違いない。

昨今、ベンチャー社長など新しい時代の立役者の中には、不倫を肯定する発言を行う者も増えている。テレビによる偏向報道がネットで指弾されるなど、より合理的で真実に近い情報が好まれる現在のネット社会において、益々不倫が増えていることを踏まえれば、「不倫はいけないこと」という価値観自体が覆っていくのも時間の問題と思われる。

関連項目


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