国民年金とは日本国の社会保障における防貧制度の一つである。日本国においては高齢者の生活の基盤(の一部)にするための社会保険として設計されている。また、当記事においては日本国の年金を中心に説明する。
当記事では主に日本国の年金について解説する。
年金は日本国の社会保障制度、そのうちでも防貧制度である。初めから社会保険として設計され運用されている。高齢化社会が進展する21世紀現在において残念ながら期待通りの働きはしていない。詳細については生活保護、および社会保障、厚生労働省の記事も参照のこと。
年金の保険料増加が近年の企業の社員雇用抑制の原因のひとつとも言われており、実際企業アンケートにおいては雇用の障害として社会保険をあげる企業も多い。その為、日本経済団体連合会(経団連)は社会保険の軽減とセットで消費税の増税を提唱しているが、実際のところこの双方には直接の相関関係はない為、経団連が厚生年金負担分を払いたくないだけではという意見もかなり多い。
所管官庁は厚生労働省。一般会計の予算額は平成26年度時点で10.7兆円となっている。
意外かもしれないが年金単独で見た場合には政府の一般会計における負担金額は爆発的には増えていない。
これは現在段階的に保険料が上昇し入金額が増えていることと、GPIFから多少なり(年間6兆円程)の形でキャッシュバックが発生している為である。毎年自動的に保険料が上がっている為、当然のことながら現役世代の負担は現在進行形で増加している。
ただし、年金でまかないきれない(フォローしきれない)老齢者の負担分については医療保険や生活保護に付回されており、そちらのほうにて深刻な予算の不足や偏りが発生している。
平成26年度 年金特別会計予算概要 |
歳入 | 歳出 |
年金特別会計は複数の内部勘定(基礎年金、国民年金、厚生年金ほか3勘定)を持っており、勘定の間でも金銭の受け渡し多くしている為とにかく分かりにくい。上記の表は勘定間のやり取りを見せないように年金特別会計と外との入出金を中心にざっくりまとめた数字である。
給付費を保険料収入(共済組合連合会等拠出金含む)、一般会計からの入金、そしてGPIFからの入金でまかなっているのがわかる。
日本の年金は実質としては1875年(明治8年)に成立した軍人の恩給からである。
企業年金としてはカネボウ(鐘淵紡績)からとされ、ドイツ鉄鋼メーカの冊子を元に1905年に作ったとされる。
本格的な年金は労働者年金保険法(1942年6月)の施行からで、戦費調達のためとにかくお金を集めるための目的で大蔵省や大日本帝国陸軍の反対を押し切って成立したものである。言い方は悪いが支払いがずっと先の話なので、とにかくお金さえ集められればどうでもいいという政府の判断だったともいわれる。それだけ日本が当時追い詰められていたのである。
非常に雑におもえる判断ではあるが実際のところ社会保険そのものが「運用と銘打って国家が好きに使える資金を捻出するためのもの」という考え方は当時広く出回っていたものである。
戦後、運用先が戦費から財政投融資を経由した公共事業に切り替わる形で続いていくこととなる。職域ごとに年金が成立したがそれを徐々に統合していき、現在の年金制度へと変わっていく。
戦後、若年労働者が企業に依存する仕組みのひとつとして厚生年金が広まることとなった。つまりサラリーマンになると医療、福祉、年金と三拍子で生活が保障される時代が到来したと考えられたのである。これには理由があり、戦中多くの人が亡くなってしまったため人口構造が偏り、たとえば100人の従業員を抱える企業でも50歳以上は一握りも居ないという社員比重もあって、あまり深く年金について考える人が居なかったのである。これに合わせて新卒主義、年功序列、終身雇用の考え方が広く広まり、悪い言い方をすれば若い世代を酷使して社会が発展する基礎となったともいえる。さらに言うならば、大手企業の多くに将来の企業年金の支払い増を約束することで基礎賃金の増加を抑制したのである。事実上の賃金の後払いであり、法律上も企業年金は支払給与の一部としてみなされる。このことが後に多くの企業年金の破綻へとつながっていく。
今も続く基礎年金制度が最初に施行されたのは1985年のことである。
そうして、年金の将来払いを未来の担保として国民が一丸となって労働に勤しんだことにより、日本国は発展し現在の高い工業力と世界でも例を見ない(新幹線や現在のインターネットインフラ等)ハイレベルの社会資本を備えた先進国へと変貌することとなった。
その一方で、年金の抱える矛盾点は制度設計から今に至るまで解消することはなかったのである。
あまり深く考えてこなかった(団塊世代を含む)戦後生まれの高度成長期の現役世代はそれを単純に人口が増えないのが原因と考え、問題をさらに先延ばしとした。それにより、21世紀の現在、年金制度は(保険料を支払った受給者たちが過大に)期待したほどの成果を発揮していないという現実に直面したのである。さらに悪いことに現役世代は将来仮に受給できても賃貸家賃にも届かない額になってしまうという現実にもさらされることとなった。
その結果、若年層が年金制度も含めて老後について私生活での明るい見通しを立てられなくなってしまったのである。
以上が制度発足から現在に至るまでの年金の歴史の概要である。
なお、現在に至るまで累積した保険料の残額、現在の運用についてはGPIFを参照。
日本の年金は継ぎはぎを重ねた結果かなり複雑な構造だったが、現在では下記に説明する形に整理されている。また、公務員の共済年金については27年10月から厚生年金に統合された。
公的年金の原則は賦課方式である。
なお、賦課方式とは高齢者がもらう年金を現役世代が払うというものであり、保険料が上昇する一方人口構成比から見て今の高齢者と同額の年金受給が見込めない現役世代から大きな反発の声も出ている。その為支払いそのものをボイコットする国民年金未払者も少なくない。また、現役世代の負担が増えすぎていることは事実であり、年金支払いにつぶれてしまう若年も発生している現状から、今後将来的な制度設計として積立方式への移行すべきとする識者も少なからず存在する(積立方式の裏付けとしてはGPIFも参照のこと)。
受給資格期間を25年から10年に短縮する年金機能強化法が成立(平成24年8月10日成立、同年8月22日公布、平成27年10月施行)しており、同様に基礎年金部分は完全に未払いであっても手続きさえ踏めば半分の期間は(半額は国税が負担しているため)払ったこととみなされる。その為2012年(平成24年)8月22日時点で42歳以下だった者であれば受給の最低資格は満たせる(消費税などの国税で徴収されているようなものと解釈すると理解しやすい)。
2016年の年金制度改革法案にて賃金スライドが改定され賃金が減少した場合には物価上昇していても年金支払い額が減少することになった。また、マクロ経済スライドが再調整されキャリーオーバー方式が実装された。賃金が上がらないデフレ環境でも、マクロ経済スライドを着実に実現できるように改定された。
ただし、支払いの成立した年数に応じて金額がどんどん下がっていくため最低額の場合には生活どころか(地方都市基準でも)家賃すら払えない額面となる。
また、現時点において生きるための生活維持の最低額に年金で届かない世帯が多発しており、結果として生活保護と年金の両方の受給で生活を保っている人々が年々増加している。
最後に老齢年金、障害年金、遺族年金の区分があるがこれは受給側の区分である。老齢年金は高齢者のもらう年金、障害年金は障害者が受け取る年金で遺族年金は被保険者が死亡したときに、残された遺族ものである。
年金の1段目部分で、公的年金である。
すべての日本国民が強制加入となっている。基礎年金部分である。半額が税金、半額が保険料にてまかなわれている。その為、保険料が払えない状態でも半額、つまり半分の期間分は払った扱いとなるのである。
20歳以上60歳未満は全員強制加入となっている。
学生、無職の人等、自営業者、農業者とその家族、第2号被保険者、第3号被保険者でない者。
国民年金の加入者のうち、民間の会社員、公務員など厚生年金、共済年金の加入者 厚生年金、共済から基礎年金部分の支払いがされている。公務員が入っていた共済年金は現在は厚生年金に統合されたている。
国民年金の加入者のうち、厚生年金、共済組合に加入している第2号被保険者に扶養されている配偶者。厚生年金、共済から基礎年金部分の支払いがされている。
企業や個人が支払いしているわけではなく、厚生年金、共済の会計の中から支払いが行われているため、全ての第2号被保険者が第3号被保険者分を支払っている。いわば勤め人の専業主婦の分を独身含め全員で払っている形である。 かつて制度設計された時には会社が従業員の老齢期まで面倒を見るという前提だったため低収入者が増え未婚率が上昇した現在においては見直しの方向にある。
パート労働者の厚生年金への加入いう条件変更は第3号被保険者範囲の変更となっている。
保険料は、平成17年4月より毎年月額で280円ずつ引き上げられており、平成29年4月以降は月額で16,900円になる。
年金の2段目部分で、公的年金である。2015年10月からは共済年金もここに含まれる。
企業に勤めるサラリーマンが加入する。支払額には1段目の国民年金分も含まれている。
また、支払額のうち半額は雇用側が支払う義務を持っている。
保険料率は、平成16年時点では収入の13.58%だったが平成16年10月から毎年0.354%引き上げられており、平成29年9月以降は18.30%(上限)になる。
公務員の2段目部分に該当する共済年金も27年10月から厚生年金に統合された。
もともと公務員は厚生年金よりも高い額面を職域部分として払っていたが職域部分については統合後は廃止、変更後は企業年金と同型の年金払い退職給付を新設。厚生年金と同様になった。
共済年金の積立金は約半分を厚生年金に移動、残りで一元化前の契約である職域加算部分の支払をしている。
共済年金としては以下が存在し、今は職域加算部分の支払、年金払い退職給付の運用、残額資産の運用を行っている。
年金の3段目部分で、私的年金である。
厚生年金基金に足す形で企業がそれぞれ個別に金融機関と契約し、社員の保険料の運用を外部委託している。
私的年金の一種という解釈も出来る。
NTTを初めとして多くの企業が積み立て不足で維持できなくなっており、私的年金の確定拠出年金に切り替えたりする事例が多く出ている。2014年段階で一段落はついているが長い目で見た場合今後もこの傾向は続くものとみられる。
公務員のはいる共済年金の三段目、企業年金に該当する部分である。
個別に処理されている為、厚生年金と共済年金の統合後も別途会計処理されることとなっている。
年金の4段目部分、私的年金である。
個人が個別に備える年金である。個人年金保険の形式を取っていたり、確定拠出年金の形だったりと様々である。
加入者が自分の責任で何に投資するかを指定するものである。要は個人持ちのファンドである。
企業年金を廃止し社員個人に私的年金に入るよう移行した企業もかなり存在する(その場合3段目部分がなくなる)。
最終的にいくらの額がもらえるようになるのか(将来の受給額)は未確定である。参考にしたアメリカの制度から日本版401kともいわれる。
税制優遇がある(上限はあるものの基本的に投資するお金は所得から控除扱いされる。自営業など厚生年金に加入できない職種は上限大幅アップ)。というか、税制優遇狙いで確定拠出年金の投資先を定期預金とか下記の個人年金保険定額型にする人もいる。
民間の保険会社の販売金融商品で預けたお金の分が保険金額でそれが支払われる形となっている。要は貯金の一種である。さらに「定額型」と「変額型」の二種類があるが多くの場合で「定額型」の方が選択されやすいようである。おそらく個人年金保険で変額型を選択するような人は確定拠出年金を試す事が多いからではないかといわれている。
こちらも税制優遇があるが、大半が生命保険・学資保険の枠と統合されている。既に前述の保険に加入していた場合は税制優遇のメリットが目減りするのが難点。
日本の民間保険会社は投資先のほとんどを国債・外債にしている。なので個人年金保険に加入することはほぼ間接的に債券投資をしているに等しい(固定型は保険会社が手数料と引き換えに利息を保障したもの)。商品に「解約した場合最大元本のX%目減りします」と注意書きがあるのはこのためである。
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