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証人喚問で黙秘…「証言を控える」とは罪人からの挑戦だ

森友疑惑の当事者として、国会に証人喚問された前高級官僚が、肝心な質問に対しては、まるで録音の再生のように、「刑事訴追の恐れがありますので、証言を控えさせていただきます」と繰り返していた。

これがいわゆる「黙秘権」の行使である。

黙秘権は、憲法38条1項に明記されており、それは、誰でも「自己に不利益な供述を強要されない」ことの保障である。

同条2項は、さらに、「自己に不利益な唯一の証拠が自白である場合には有罪とされない」と明記し、それは36条の「拷問の禁止」と対になっている。つまり、自白だけで被疑者・被告人を有罪にできる制度だと、警察と検察が、自白を取ろうとして容疑者を逮捕して拷問に走る危険があるからである。これは、歴史的体験に裏付けられた英知である。

しかし、非力な庶民を官憲による拷問から守るための黙秘権であるが、生涯の優雅な天下り生活が保障され、役所による事実上の組織的な証拠隠滅に守られた前高級官僚が、このような形で黙秘権を「悪用」できる議院証言法には本質的な欠陥があるように思われる。

つまり、その前官僚は、要するに、「は悪事に関わりました。しかしいまだ立証されていない以上、黙って逃げ切ります。ご不満ならそちらで立証してみなさい」と開き直っているようなものである。そして、開き直られた野党議員には、検事のような強制権限は与えられていない。だから、せっかくの証人喚問も茶番劇のように終わってしまうのである。

そこで問題になっている法的立証は検察に期待するとして、今、主権者国民ができることは、政治的決着をつけることである。本来は公益に奉仕するために働いていたはずの公僕を、あのような悪事と開き直りに走らせた政治的な力関係にこそ原因があることは、巨視的に見れば明白である。

だから、今の異常な権力構造を壊すこと、つまり、政権交代こそが唯一かつ最も有効な責任追及手段である。にもかかわらず、ほとんどの人々は、状況を見て軽蔑しながらも、内心では諦めてしまっているように見える。


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