ゆうちょ銀行の預入限度額の見直しをめぐる議論が大詰めを迎えている。政府の郵政民営化委は、現在1300万円となっている預入限度額を撤廃する方向で検討していて、今月下旬にも提言がまとめられる。
全国地方銀行協会の佐久間英利(千葉銀行頭取)は「今後、金利が正常化すれば(民間金融機関からゆうちょ銀への)資金シフトが起こる可能性が高い」と反対を表明している。これは、国のKY(空気が読めない)の典型事例だ。
「ゆうちょ銀行は、金利の優遇などはまったくありません。民間と同じ土俵です」(郵政民営化委)と言うように、政府系の商工中金のような金利の“特別扱い”は一切ない。また、限度額撤廃派は、2016年4月に限度額が1000万円から1300万円に引き上げられた際、ゆうちょ銀行の預金額が1.8%しか増えなかったことから、顧客流出はないと主張している。
それぞれ言っていることはそうなのだろうが、地銀関係者はこう言う。
「地方経済の停滞の中、マイナス金利政策で地銀はボロボロです。県レベルでのシェアを見られ、合併もままならない。預金者をつなぎ留めるのに必死な中、ゆうちょ銀行と勝負?そんな体力はありません」
ゆうちょ銀行の株式は日本郵政の所有が7割を超え、日本政府が後ろ盾にいる。また、郵政民営化委によると、2017年3月現在で、ゆうちょ銀行は直営233店舗、有人店舗2万4060軒、ATM2万7561カ所を展開している。いくら地域に密着していても、信用と隅々までのネットワークで、ゆうちょ銀行に太刀打ちできる地銀は皆無と言っていいだろう。預金者が、ゆうちょ銀行に預金した方が「安心で便利だ」と考えるのは当然だ。
「長期的には、ゆうちょ銀行にも勝てる銀行にならなくてはいけないのは分かっています。ただ、なぜ今なのか。融資でそれなりの金利がいただけるような経済状況ならまだしも、行き場のない状況で限度額撤廃とはあんまりです。理屈や数字で決めるのではなく、地方経済の現場の気持ちに思いが及ばないのでしょうか」(前出の地銀関係者)
少しは地方の現場の気持ちを忖度したらどうか。