「加計学園」の愛媛県今治市での獣医学部新設をめぐり「安倍晋三案件」と記された県側作成の記録文書が残っていた一件。愛媛県の中村時広知事は2018年4月10日、「当時の担当職員が(面会内容を)会議で口頭説明するための備忘録として作成した文書」と認め、「県の職員は文書をいじる必然性は全くない」と述べた。つまり、「備忘録」にウソを書く必要性はなく、文書の信憑性は極めて高いということだ。やはり安倍晋三首相は“腹心の友”に便宜を図っていたわけだ。
2018年4月10日の朝日新聞によれば、2015年4月2日、愛媛県と今治市の課長や加計学園事務局長が柳瀬唯夫と官邸で面会。柳瀬唯夫は「本件は『安倍晋三案件』となっており、内閣府藤原の公式ヒアリングを受けるという形で進めてください」と言ったという。
2018年4月10日は東京新聞も、加計がらみのスクープを飛ばしている。内閣府の藤原豊が同じ2015年4月2日、愛媛県今治市職員に「要請の内容は総理官邸から聞いている」として、国家戦略特区の利用を助言したと報じた。これらは、2016年9~10月に内閣府側が「官邸の最高レベルが言っている」「安倍晋三のご意向」などと発言したとされる文科省の記録とピッタリ符合する。その1年半前の時点で、すでに「安倍晋三案件の加計ありき」だったことになる。
朝日新聞も東京新聞も情報ソースは「政府関係者」。このタイミングで次々と新しい材料が暴露されるのは、安倍晋三政権に“忖度”を続けてきた官僚たちの反乱ではないのか。
「『記録がない』と言い続け、決裁文書改ざんまでして安倍晋三政権を守ろうとした前国税庁長官の佐川宣寿が、結局は証人喚問にさらされ、刑事訴追まで現実味を帯びてきている。それでいて政権側は、官僚が悪いというスタンスを鮮明にしています。官僚としては、『やってられるか』という気分です。出世第一に考える幹部は、どう振る舞えばいいのかオロオロしていますが、ノンキャリアやキャリアの若手はこのままでは官僚組織が崩壊してしまうという危機感を抱いています。彼らの中から、政権に不都合でも真実を明らかにしようという動きが出ているのだと思います」(元文科省審議官の寺脇研)
2018年4月10日の「野党合同ヒアリング」で、「ご自身は安倍晋三案件と聞いたことがあるか」と問われた内閣府地方創生推進事務局の塩見英之は「個人の思いは別にして、内閣府としてどう認識していたかは、私の一存では答えられない」とシドロモドロ。
聞いていないなら否定すればいいのに、できない。かといって「全くない」なんて言い張れば、後々どんな文書が飛び出すか分からない。そんな複雑な心情なのだろう。
2018年4月10日、国会内のシンポジウムに出席した前川喜平は「佐川宣寿も、柳瀬唯夫にも同情を禁じ得ない。悪い人じゃないのに。政権のせいで。かわいそうだ」と語った。官僚たちはもはや安倍晋三に忖度しても、微塵もいいことはないと分かったはずだ。安倍晋三ではなく、良識ある官僚が今後、すべての膿を出し切ることになるのではないか。