忖度(そんたく)は、他人の心情を推し量ること、また、推し量って相手に配慮することである。「忖」「度」いずれの文字も「はかる」の意味を含む[2]。
2017年に表面化した森友学園問題と加計学園問題に際して用いられたことで、流行語として広く知れ渡ることとなった(詳細後述)。
辞典編集者の神永曉によれば、そもそも「忖度」という言葉は、すでに中国の古典『詩経』に使用されており、平安時代の『菅家後集』などにも存在が確認されている。明治期にも使用例があるが、しかし、この頃には、単に人の心を推測するという程度の意味しかなく、相手の気を配って何か行動するという意味合いはなかったという。
毎日新聞の記事によれば、1990年代には「忖度」という言葉は、脳死や臓器移植といった文脈でしばしば用いられているが、この際もやはり患者の生前の意思を推量するというもともとの意味で使用されていた。ところが、1997年夏の時点になると、毎日新聞の記事においても、小沢チルドレンが小沢一郎の意向を「忖度」するというような記述が見つかり、上位者の意向を推し量る意味合いでの「忖度」の用例が見つかるという。日本語学者の飯間浩明も、2006年12月15日の朝日新聞の社説において、上位者の意向を推し量る「忖度」の用例を採集している。
そして、飯間によれば、2014年以降にはNHK会長の籾井勝人の意向をNHK職員が「忖度」するという用例もしばしば報道に見られるようになり、「忖度」という言葉には否定的なニュアンスが含まれるようになっていた。
上述したとおり、近年では上位者の意向を推し量る意味でしばしば用いられる。2010年代以降、森友学園問題以前の使用例をいくつか挙げる。
2017年2月に表面化した学校法人森友学園への国有地格安売却問題をめぐって、同年3月23日、同学園の籠池康博が証人喚問ののちに日本外国特派員協会で行った記者会見で、「口利きはしていない。忖度をしたということでしょう」「今度は逆の忖度をしているということでしょう」と発言した。これにより、このことばは同問題に関する報道で多用されるようになり、検索数も急上昇し、同問題と必ずしも関係なくソーシャル・ネットワーキング・サービスでも多用されるようになった。
その後、引き続いて表面化した加計学園問題でも報道で用いられる。
流行に便乗した商品として、大阪市のヘソプロダクションが饅頭に「忖度」の文字を刻印した「忖度まんじゅう」を発売し話題となった他、ファミリーマートが弁当「忖度御膳」を発売するなどの動きもあった。
同年12月1日に発表された「新語・流行語大賞」では、「インスタ映え」とともに年間大賞に選出された。なお、実際に流行語大賞を受賞したのは上述のヘソプロダクション代表取締役の稲本ミノルである。また、12月3日には三省堂「今年の新語2017」大賞に選ばれた。
「忖度」に直接対応する英単語はなく、上記の籠池康博の記者会見の際に、外国人記者に向けて英語で意味を解説する場面があった。