顔射(がんしゃ)とは非常に高度な狙撃術である。
顔射は大きな分類で言えばヘッドショットに該当する。ヘッドショットはターゲットが頭部全体だが、顔射の場合は正面から見た顏部分のみを狙い撃ちする必要があるまことに高度な技である。顔に正対する都合上銃身を見つめているような絵面になるため「カムショット(カメラ+ショット)」と呼称されるのが一般的である。
戦場においては頭部にヘルメットなどの防御板を被せる事が殆どだが、顔部分は視界確保や個人識別の為ある程度露出させざるを得ない。稀に防毒マスクのように完全に塞ぐ装備もあるが、その場合は周囲への警戒がおろそかになりやすく定期的に顔面部を露出させて調べる必要があるので同じことである。そこを針に糸を通すような精確さで撃ち抜けば、高確率で戦意を喪失させると共に失血や窒息をもたらす事が可能となる。
ただし実戦で用いる場合は絶命に時間がかかる上見た目が凄惨な事になるため、国際人道法において固く禁止されている。その為現代においてはごく小規模な個人的戦闘行為で用いられる事が殆どである。その際には実弾ではなく殺傷力のない液体弾頭を使用し、顔の前に銃口を突き付け予告してから放つのが一般的である。また戦闘終了の合図にする事も多い。
80年代以降、技術が発展した事によりハイスピード撮影で顔射の様子をスロー観察するなど様々な応用が可能となっていった。その技術は長く磨かれ続け、今後も発展していくと予測されている。
上記の現代的小規模戦闘での使用において注意するべきなのは、相手への配慮である。規模が小さいとはいえルールを無視していい筈はなく、また現代では狙撃術としてよりパフォーマンスの意味が強いため無許可での使用は相手側を混乱させる事になる。
予め顔めがけて発射するとわかっていれば対応も出来るが、そうでなければ反射的に銃身を殴ってしまったり予備弾倉を潰してしまったり射手を正面から捩じ伏せてしまったり、と悲劇を産むばかりになってしまう。人は驚くと反射的に殴ってしまうものなのである。言われれば顔を上げてあげたり視線を向けたりすること吝かではないが、不意打ちはよろしくない。
そして基本的に、顔にモノをぶつけられて怒らない人間と言うのはまずいない。そこに留意して修練を積むのが理想と言えるだろう。