#author("2018-08-28T11:43:55+09:00","","")

#author("2018-08-28T11:46:55+09:00","","")

[[CentOS7]]

*SoftEther VPN ''仮想レイヤ 3 スイッチ'' [#h8acacc1]
「''仮想レイヤ 3 スイッチ''機能」は、''VPN Server'' 内の複数の''仮想 HUB'' 間に IP ルーティングを行うことができる仮想のルータを追加し、管理者が定義したルーティングルールにしたがって IP ルーティングを行うことにより、''仮想 HUB'' のセグメント間のレイヤ 3 での接続を実現することができる機能です。



*''仮想レイヤ 3 スイッチ''とは [#v3558a38]
**''仮想レイヤ 3 スイッチ''の概要 [#r6b630cf]
「''仮想 HUB''」は、物理的な「レイヤ 2 スイッチ」(スイッチング HUB) を、仮想的にソフトウェアによって実現したオブジェクトであり、''VPN Server'' 内に複数作成することができます。仮想 HUB はレイヤ 2 での ''Ethernet'' フレームの交換処理のみをサポートしており、レイヤ 3 でのルーティングをサポートしていません。

''仮想レイヤ 3 スイッチ''は、複数の''仮想 HUB'' 内のレイヤ 2 セグメント間で IP ルーティングを行いたいという要望に基づいて開発され搭載された機能です。''仮想レイヤ 3 スイッチ''は、通常のオフィスなどにある「ルータ」や「レイヤ 3 スイッチ」などの通信機器の機能をそのままソフトウェアとして実装したものです。複数の''仮想 HUB'' を作成してレイヤ 2 セグメントを分離し、それらのレイヤ 2 セグメント間を IP ルーティングすることによって、それぞれのネットワーク間での IP パケットの交換をサポートします。

&ref(01.png);



*''仮想レイヤ 3 スイッチ''に関する権限 [#m03ea74e]
''仮想 HUB'' を作成することができるのは ''VPN Server'' 全体の管理者のみですが、同様に''仮想レイヤ 3 スイッチ''を「作成」「削除」または「設定」することができるのも「''VPN Server'' 全体の管理者のみ」です。各''仮想 HUB'' の管理者は、自分が管理している''仮想 HUB'' が、どのように''仮想レイヤ 3 スイッチ''と接続されているのかを知ることはできますが、既存のレイヤ 3 スイッチを操作して接続を編集したり、ルーティングテーブルを操作したりすることはできません。したがって、''仮想レイヤ 3 スイッチ''機能を使用するには ''VPN Server'' 管理者が設定を行う必要があります。



*ブリッジと IP ルーティングの違い [#se6887b3]
レイヤ 2 ネットワーク同士を接続する「''ブリッジ''」や''仮想 HUB'' 間の「''カスケード接続''」は、2 つの別々のネットワークセグメント同士を、1 つのネットワークセグメント化する仕組みです。1 つのネットワークセグメント内で「''TCP/IP'' プロトコル」を使用する場合は、原則としてそのセグメント内のコンピュータは同一の IP ネットワークに所属している必要があります (同一のセグメントで複数の IP ネットワークを多重化して通信させることもできますが、そのネットワークに接続しているコンピュータ同士は、同一の IP ネットワークに所属しているものとしか直接通信できません)。

これと比較して、IP ルーティングは 2 つの別々のネットワークセグメント間で、IP レイヤでパケット交換を行う仕組みです。

物理的なルータやレイヤ 3 スイッチは、ルーティングの対象となる各ネットワークセグメントに対して 1 つの IP アドレスを持ち、その IP アドレスを経由して通信しようとする IP パケットを、ルータ内部で保持しているルーティングテーブルによって他の適切なインターフェイスに転送します。

''VPN Server'' で定義することができる仮想的なレイヤ 3 スイッチも同様の仕組みで動作します。''VPN Server'' で''仮想 HUB'' 間に''仮想レイヤ 3 スイッチ''を置くと、その''仮想レイヤ 3 スイッチ''が接続している''仮想 HUB'' 間で IP ルーティングが可能になります。この場合、''仮想レイヤ 3 スイッチ''は、インターフェイスを両側のセグメントに対して 1 つずつ持ちます。例として「192.168.1.0/24」と 「192.168.2.0/24」の 2 つの IP ネットワークが存在し、それらの間で''仮想レイヤ 3 スイッチ''を用いてルーティングを行う場合は、両側のネットワークに対してインターフェイスを接続し、たとえば「192.168.1.254」と「192.168.2.254」という 2 つの IP アドレスを割り当てます。すると、「192.168.1.0/24」に所属するコンピュータは、「192.168.2.0/24」ネットワークに対して IP パケットを送信したい場合は、「192.168.1.254」をゲートウェイとしてその IP パケットを送信することができます。「192.168.1.254」と「192.168.2.254」の 2 つのインターフェイスを持ったルータは、このパケットを「192.168.2.0/24」のネットワークに対して送り出します。このような仕組みで IP ルーティングは機能します。なお、''VPN Server'' では、''仮想レイヤ 3 スイッチ''が''仮想 HUB'' に接続するための論理上のインターフェイスのことを「''仮想インターフェイス''」と呼びます。''仮想レイヤ 3 スイッチ''と''仮想 HUB'' との間の接続は、実際にはソフトウェアの内部のメモリ上で行われるものであり、ユーザーの目に見えるわけではありません。ただし、''仮想レイヤ 3 スイッチ''による仮想インターフェイスが接続されている''仮想 HUB'' には、「''仮想レイヤ 3 スイッチ''セッション」という特殊な仮想セッションが登録されます。



*''仮想レイヤ 3 スイッチ''の定義 [#bf55e8b0]
''VPN Server'' は、デフォルトでは「''仮想レイヤ 3 スイッチ''」を 1 つも持っていません。''仮想レイヤ 3 スイッチ''は、''VPN Server'' の管理者が必要な時に必要な数だけ作成することができます。

すべての''仮想レイヤ 3 スイッチ''には名前を付けることができ、その名前によって識別されます。名前には「英数字および一部の記号」を使用することができます。新しい''仮想レイヤ 3 スイッチ''を定義するには、その''仮想レイヤ 3 スイッチ''の「名前」を決定してください。一度作成した''仮想レイヤ 3 スイッチ''の名前は、あとから変更することができないので注意してください。

''仮想レイヤ 3 スイッチ''に関する設定を行うには、「''VPN サーバー管理マネージャ''」の [''レイヤ 3 スイッチ設定''] ボタンをクリックし、[''''仮想レイヤ 3 スイッチ''設定''] ダイアログボックスを表示してください。また、ここにすでに作成されている''仮想レイヤ 3 スイッチ''が登録されている場合は、その''仮想レイヤ 3 スイッチ''をダブルクリックして設定画面を開くことができます)。「''vpncmd''」では、"''Router''" で始まる名前のコマンドを使用してください。

''仮想レイヤ 3 スイッチ''に関する設定を行うには、「''VPN サーバー管理マネージャ''」の [''レイヤ 3 スイッチ設定''] ボタンをクリックし、[''仮想レイヤ 3 スイッチ設定''] ダイアログボックスを表示してください。また、ここにすでに作成されている''仮想レイヤ 3 スイッチ''が登録されている場合は、その''仮想レイヤ 3 スイッチ''をダブルクリックして設定画面を開くことができます)。「''vpncmd''」では、"''Router''" で始まる名前のコマンドを使用してください。




&ref(02.png);



新しい''仮想レイヤ 3 スイッチ''を作成するには、[''新規作成''] ボタンをクリックして、新しく作成する''仮想レイヤ 3 スイッチ''の「名前」を指定します。''仮想レイヤ 3 スイッチ''を作成しても、''仮想インターフェイス''を定義して [''動作開始''] ボタンをクリックしなければ、その''仮想レイヤ 3 スイッチ''は動作しません。



&ref(03.png);



*仮想 HUB へ接続する仮想インターフェイスの追加 [#m01b700a]
''仮想レイヤ 3 スイッチ''を作成しても、それだけでは何の役にも立ちません。物理的なルータやレイヤ 3 スイッチの製品を購入して、机の上に置いただけの状態と同様です。ルータと各接続先のネットワークの間を、物理的に LAN ケーブルなどで接続するのと同様に、''仮想レイヤ 3 スイッチ''に、接続したい先の''仮想 HUB'' への''仮想インターフェイス''を登録する必要があります。

新しい''仮想インターフェイス''を登録するには、[''仮想インターフェイスの追加''] ボタンをクリックします。[''仮想インターフェイスの追加''] ダイアログボックスが表示されますので、ここで「''接続先の仮想 HUB''」を選択します。また、その''仮想インターフェイス''が、''仮想 HUB'' 内で持つ「IP アドレス」と所属する「サブネット空間」も指定します。



&ref(04.png);



''仮想レイヤ 3 スイッチ''には、複数の''仮想インターフェイス''を作成することができます。通常は 2 個以上の''仮想インターフェイス''を追加します (1 個だけの場合はほとんど役に立ちません)。''仮想レイヤ 3 スイッチ''によってルーティングの対象にしたい''仮想 HUB'' をすべて登録してください。

''仮想レイヤ 3 スイッチ''が直接接続することができる''仮想 HUB'' は、同一の ''VPN Server'' 上で動作する''仮想 HUB'' のみです。別のコンピュータの ''VPN Server''、または ''VPN Bridge'' 上で動作する''仮想 HUB'' との間を''仮想レイヤ 3 スイッチ''によって IP ルーティングさせたい場合は、まずローカル側に適当な名前の''仮想 HUB'' を作成しておき、その''仮想 HUB'' に対して''仮想レイヤ 3 スイッチ''から接続して、次にその''仮想 HUB'' と別のコンピュータの ''VPN Server'' または ''VPN Bridge'' 上で動作する''仮想 HUB'' との間を「''カスケード接続''」してください。

この方法で、離れた拠点場所の''仮想 HUB'' または物理的な LAN 同士を''仮想レイヤ 3 スイッチ''によって接続し、IP ルーティングの仕組みをうまく取り入れた拠点間接続 ''VPN'' を構築することができます。

従来は、同様の接続方法を行う場合には、''VPN'' だけでなく IP ルーティングするためのハードウェアを物理的に購入する必要がある場合がありました。''SoftEther VPN'' では、遠隔地同士を IP ルーティングによって ''VPN'' 接続するために必要な機能がソフトウェアとしてまとめられているため、複雑なネットワーク設計でも簡単に実装することができます。



*ルーティングテーブルの編集 [#hdf13930]
''仮想レイヤ 3 スイッチ''は、通常の物理的なルータやレイヤ 3 スイッチと同様に、「ルーティングテーブル」を持っています。''仮想レイヤ 3 スイッチ''は、特に何も指定しなくても、''仮想 HUB'' に対して接続している''仮想インターフェイス''があれば、その''仮想インターフェイス''に設定されている IP アドレスとサブネットマスクによって決定される IP ネットワークへのルート情報を持っています。したがって、''仮想レイヤ 3 スイッチ''に対して直接接続されているレイヤ 2 セグメントに対するルーティングテーブルは定義する必要はありません。

直接接続されているレイヤ 2 セグメントを経由して、それよりも先のセグメントにある IP ネットワークに対して IP ルーティングを行う必要がある場合は、''仮想レイヤ 3 スイッチ''のルーティングテーブルを直接編集して、適切な「ルーティングテーブルエントリ」を追加する必要があります。

現在のルーティングテーブル一覧は、[''仮想レイヤ3 スイッチの編集''] ダイアログで表示されます。新しい''仮想レイヤ 3 スイッチ''を作成した直後は、ルーティングテーブルは「空」です。新しいルーティングテーブルエントリを追加したい場合は、[''ルーティングテーブルエントリ''] ボタンをクリックしてください。



&ref(05.png);



[''ルーティングテーブルエントリの追加''] 画面には、新しく登録したいルーティングテーブルエントリの内容を指定するボックスが表示されています。ここで登録する必要があるのは、一般的なルータやレイヤ 3 スイッチでスタティックルーティングテーブルにエントリを追加する際に指定するような情報と同一です。具体的には下記のような項目を指定します。




-ネットワークアドレス &br; このルーティングテーブルを用いてルーティングの対象とする宛先 IP アドレスを含む「ネットワークアドレス」を指定します。
-サブネットマスク &br; ネットワークアドレスと共に「サブネットマスク」を指定します。
-ゲートウェイアドレス &br; IP パケットを渡す先の「ルータの IP アドレス」を指定します (つまり、次のルータの IP アドレスです)。ここで指定することができる IP アドレスは、この''仮想レイヤ 3 スイッチ''が持つ各''仮想インターフェイス''で定義されている IP アドレスとサブネットマスクによって定義される IP ネットワークのうち、いずれかに含まれている必要があります (万が一含まれていない場合も、エラーなく登録されてしまいますのでご注意ください)。もし別の''仮想レイヤ 3 スイッチ''が隣接する''仮想 HUB'' に接続されている場合は、その別の''仮想レイヤ 3 スイッチ''の持つ''仮想ネットワークインターフェイス''の IP アドレスである場合もあります。
-メトリック値 &br; ルーティングテーブルエントリの「メトリック値」を指定します。

&color(red){デフォルトルートを指定する場合は、ネットワークアドレスを「0.0.0.0」、サブネットマスクを 「0.0.0.0」と指定してください。};


*仮想レイヤ 3 スイッチの開始と停止 [#p87a2371]
**開始と停止 [#e8ef59bd]
''仮想ネットワークインターフェイス''を、1 つ以上登録した''仮想レイヤ 3 スイッチ''は、動作を開始することができます。動作を開始するには、[''動作開始''] ボタンをクリックしてください。また、動作中の''仮想レイヤ 3 スイッチ''は、いつでも [''動作停止''] ボタンをクリックすることによって動作を停止することができます。

なお、[停止] 状態以外の状態では、その''仮想レイヤ 3 スイッチ''の''仮想インターフェイス''一覧またはルーティングテーブルを編集することはできません。これらのパラメータを編集するためには、一旦''仮想レイヤ 3 スイッチ''を停止してください。

**仮想レイヤ 3 スイッチの状態 [#l348024a]
''仮想レイヤ 3 スイッチ''には、以下の「3 つ」の状態があります。各''仮想レイヤ 3 スイッチ''の状態は、[''仮想レイヤ 3 スイッチ設定''] でリアルタイムに表示されます。

|状態|説明|h
|停止|''仮想レイヤ 3 スイッチ''が「停止」している状態です。この状態でのみ、''仮想レイヤ 3 スイッチ''のパラメータの設定を行うことができます。|
|開始 (動作中)|''仮想レイヤ 3 スイッチ''が「動作」しており、定義されているすべての''仮想インターフェイス''の接続先''仮想 HUB'' すべてが、''VPN Server'' 上に存在し「オンライン」状態にあるので、''仮想レイヤ 3 スイッチ''が機能していることを示します。この状態でのみ、''仮想レイヤ 3 スイッチ''は IP ルーティング処理を行います。また、この状態で、定義されている''仮想インターフェイス''の接続先''仮想 HUB'' が、1 つでも ''VPN Server'' から削除されるか 「オフライン」状態になった場合は、自動的に [開始 (エラー)] 状態に遷移します。|
|開始 (エラー)|''仮想レイヤ 3 スイッチ''は「動作開始」状態に設定されているものの、定義されているすべての''仮想インターフェイス''の接続先''仮想 HUB'' のうち、1 つ以上が ''VPN Server'' に存在しないか「オフライン」状態になっており、''仮想レイヤ 3 スイッチ''が IP ルーティング処理を開始できない状態です。この状態で、定義されている''仮想インターフェイス''の接続先''仮想 HUB'' すべてが ''VPN Server'' 上に存在し、かつ「オンライン」状態になると、自動的に [開始 (動作中)] 状態に遷移します。|



*制限事項 [#g3e2ffa3]
''仮想レイヤ 3 スイッチ''機能の「制限事項」には、次のようなものがあります。
-「ダイナミックルーティングプロトコル」には、対応していません。
-''IGMP'' には対応していません。
-''仮想レイヤ 3 スイッチ''の''仮想インターフェイス''に対して、1,472 バイトを超える ''ICMP Echo'' リクエストを送信すると、1,472 バイトの ''ICMP Echo'' 応答が返ってきます。

トップ   編集 差分 履歴 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS