Dictionary

独り言

独り言(ひと-ごと)とは、孤独に対する自己防衛反応である。

概説

ここからはあくまで独り言だ。人間とは言語を媒介とするコミュニケーションによって社会を形成する動物であり、他の動物に比較して劣っている身体的能力を集団行動、いわば「群れる」ことによって補ってきた(集団行動には意思疎通が不可欠であることは言うまでもない)。しかし、時代が下るにつれ、生活環境の改善(生命の安全確保、生存技術の革新)によって種の生存率を向上させた結果、人間は個体ごとに生活様式の多様化を実現。人は基本的に一人であってもその生存が可能になり、必要に応じて集団を構成・解散するという、いわゆる「人間関係」の距離感を適切に保つ、いわゆる「社交」の知恵が生み出され、これが人間社会の合理化を加速される結果となった。しかし、必要に応じた距離感を保つことは逆に「集団で行動する理由」を常に要求することでもあり、基本的な生活形態として人間は孤独であることが前提となってしまったのである。かくして発せられ、交信する機会が減ってしまった言語は次第に衰退し、人間本来の強みであったコミュニケーション能力も退化する傾向にあると言われている。その危機に警鐘を鳴らす本能によって発せられる防衛反応こそが、相手もいないのに一人延々と言葉を発し続けてしまう状態、すなわち「独り言」である、という説がある。

異説

人間は言語(の出入力・交信量)によって自らの思考回路を絶え間なく構築および修復、増強し、他者と意思の疎通を図り、行動する生き物である。そのため、長時間にわたって言語を発さずにいると、思考回路が寸断されて退化し、果ては行動にまで重大な支障を及ぼすようになる。その状態がいわゆる「精神異常」であり、その言動も支離滅裂な(少なくとも自らの生存に何ら益しない)ものとなってしまう。そのため、たとえコミュニケーションの相手がいなくても自ら言語を出入力(自分で話した言葉を自分で聞く状態)し、自らを言語使用環境下におくことで思考回路の保全、ひいては精神衛生の保持を図る防衛反応をとるのだが、それこそが「独り言」の本質である、という説もある。

俗説

また、何の根拠もデータもないのだが、人間が一日に交信(やりとり)するべき(少なくとも精神衛生を保つ上で)言語量が100として、その人間が仮に70しか言語を交信しなかったとする。その場合、不足分の30を放置して(言語を交信せずに)おくと、その30ずつ精神が蝕まれていく。その蝕まれた量がある水準(個人差は当然ある)を超えると発狂してしまう(であろう)ため、不足分の30を自分自身の独り言(つまり一人二役)によって賄うことで精神の安定を図っている、という説がないこともない。また、独り言はドイツ(独)語の事ではないかという説も誰かが唱えたらしい(確かに、何となく響きがモゴモゴしているような気もする)が、正直無意味なたわごとである。


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