Dictionary
安楽死†
安楽死(英:euthanasia)は、回復の見込みのない患者を、生きつづけることの苦しみから解放させるために取る処置。楽に死ぬこと。医学的判断に基づいた人道的処置とされるが、自分で死を決める自殺とも言えるし、他者によってなされる死という点では「他殺」の形式を備えてもいる。当人の意志が確かめられない場合、どのような根拠によって誰が判断を下すのか、またそれが妥当な判断と認められるには、どのような条件が満たされるべきなのか、理念、方法においても課題は多い。
日本での安楽死をめぐる動き†
安楽死事件†
- 1991年:東海大学安楽死事件(神奈川県) - 末期がん症状の患者に塩化カリウムを投与し死亡させた内科医が殺人罪に問われた刑事事件。国内唯一の安楽死の正当性が問われた事件。
- 1996年:町立国保京北病院事件(京都府)
- 1998年:川崎協同病院事件(神奈川県) - 当時植物状態で入院中の男性患者から気管内チューブを抜き、筋弛緩剤を投与して死亡させた。殺人罪に問われたが、2009年12月、最高裁は上告を棄却。殺人罪が成立。懲役1年6ヶ月、執行猶予3年とした2審の東京高裁判決が確定した。
- 2000年-2005年:射水市民病院での連続安楽死事件(富山県) - 入院患者7人の人工呼吸を外して死亡させた。尊厳死の法制化が話題になった事件。これがきっかけになり、厚生労働省が終末期医療に対するガイドラインを示す。
安楽死をめぐる政治的動き†
賛成派
- 「日本尊厳死協会」 - 2005年に尊厳死の法制化を要望する14万筆近い署名をもって国会議員に働きかける。その後、超党派で集まる「尊厳死法制化を考える議員連盟」(中山太郎会長)が発足。2007年に法案要綱案を公表したが、本格議論に至ることはなかった。
- 井形昭弘 - 尊厳死協会元理事長。「多くの国で法制化されている尊厳死を日本だけが拒む理由はどこにもない」。
- 土本武司 - 元白鴎大学法科大学院長。「末期患者を苦しみから救う目的であれば、医師が重罪に問われるのは忍びない。通常の殺人行為と区別するような法整備を急ぐべきだ」。
- 加藤尚武 - 京都大学名誉教授。「家族に安楽死の決定権を委ねて、それが良識の枠組みに適っているかどうかを第三者的な機関が判定するというやり方の方が、理性的である」。
反対派
- 鎌田實 - 諏訪中央病院名誉院長。「延命治療を望むも拒むも自己決定が前提。尊厳死の法制化は時期尚早」。
- 清水昭美 - 「脳死」・臓器移植を許さない市民の会代表。「延命を中止し、早く死なせることは、本人にとって安楽で尊厳なことと言えるのか」。
- 水上勉 - 作家。「生命とは神秘なもの。それなのに周りの健康な人間が面倒がって止めるなどという事は絶対いけない」
関連項目†
- 自殺
- 死/生
- 生命
- 人生
- 殺処分
- 「生きるに値しない命」 - ナチス・ドイツのスローガン
- 中絶