政府は閣議で、セクハラ疑惑の渦中にある福田淳一の辞任を正式に決めた。
約5300万円とされる退職金の支払いこそ留保したものの、福田淳一はこれで懲戒などの処分対象者ではなくなった。
被害を公表したテレビ朝日の抗議を受けた財務省の調査は、緒についたばかりである。
今後の調査で減給などの処分に相当する事実が認められれば退職金を減額できるが、正式な処分とはならない。再調査を厳正、円滑に進めるため、事務方のトップである事務次官の職を外しても、官房付などの立場で福田淳一を省内にとどめることはできた。
安倍晋三は公文書管理など一連の問題とともに「行政のトップである私自身が、一つ一つの問題について責任をもって全容を解明し、うみを出し切っていく決意だ」と繰り返してきた。処分がないままの辞任で、その機会を失ったことになる。
一般に、企業などが不祥事の対応にあたる際に留意すべきこととして「社長限界でしょ」という語呂合わせがある。まず謝罪、次に調査、原因究明、改善策、処分の公表という流れの、頭の読みを並べたものだ。
福田淳一のセクハラ問題をめぐって財務省は、一切の謝罪もないまま、一方的な福田淳一の言い分のみを聴取結果として公表し、再発防止策を打ち出す間もないままに辞職を認め、処分対象者から外してしまった。不祥事対応としては、最悪の部類に入る。
福田淳一はセクハラを告発された録音データについて「全体をみればセクハラに該当しないことは分かるはずだ」と否定したままだ。だが部分的であっても、福田淳一の発言が破廉恥で、品性のかけらもないことは明白である。
財務省はまず謝罪し、公平な調査結果の公表を急ぎ、適正に処分すべきだった。
南北会談、米朝会談を控えて北朝鮮をめぐる外交は重大局面を迎えている。国内にも難問は山積している。確かに、いつまでもセクハラ問題ばかりに関わってはいられない。
しかし、事態の早期収束を妨げているのは、事後対応を誤り続ける財務省であり、閣議決定で福田淳一の辞任を許した政府なのではないか。不規則発言で混乱を助長する与党議員も同様である。