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ネット右翼

ネット右翼とは、広義ではインターネット上で右翼的・保守的・国粋主義な発言や行動を取る人々の呼称である。狭義の捉え方は各個人によって差異がある。詳しくは概要以降にて。

概要

ネット上の右翼というもの自体はネット黎明期から存在しており、それを意味する「ネット右翼」という用語も遅くとも1999年には既に登場していたことが確認されている。

ネット右翼は日韓W杯前後を期に自由主義史観(ここでは特に日本の植民地政策や戦争を正当と評する史観)の広まりと、あちら側の反日ナショナリズムに触発された嫌中憎韓ナショナリズムの高まりを受けて急速にその勢力を広げ、2000年代後半にはネット上の政治的意見の過半を占めるに至る。さらにばらばらな個人だったネット右翼が団結してデモや不買運動を起こしたり、継続的なグループや組織を立ち上げるケースも出始めている。

こうした広がりを受け、現在では政治家政党マスコミ、学者もネット右翼を積極的に取り上げるようになっている。肯定側ではネット右翼出身者を選挙の候補者として擁立したり、ネット右翼を支持基盤として取り込もうとしたり、ネット右翼を対象とした出版やグッズ販売(愛国ビジネス)を展開するなどしている。否定側では彼らの思想内容やこれに迎合する動きを批判するほか、人種憎悪的言動を禁止する法律を制定するよう働きかけるなどしている。

ネット右翼の実数は―当たり前といえば当たり前だが―不明である。ただ肯定側の古谷経衡は「全国250万人」、否定側のやまもといちろう(切込隊長)は「最大で120万人」と、いずれもネット調査などを元に推測している。属性分析も調査の難しさ+調査側のバイアスのために確たるものがないのが実情だが、「30代から40代あたりの男性が相対的に多め」という部分は肯定否定中立どの調査でも共通点として出てきやすい。いずれにせよ、ネット右翼がもはや無視できないだけの大きさを持つ政治勢力、圧力団体となっているのは間違いない。

元来ネット内外を問わず「右翼」「左翼」という伝統的な政治思想分類は、長年の使用で様々なイメージが付いているため付けられる側から嫌われる場合が多く(しばしば彼らは「保守」「リベラル」と呼ばれたがる)、当然ながらネット右翼―ネット上で右翼的な発言や行動を取る人々―の大半は自身を「ネット右翼」と呼ばれることを好まない。「ネトウヨ」という略称もあるが、これはニュアンス的に蔑称として用いられる度合いが強いため、ますます好まれない。(後掲「”ネット右翼”という言葉への批判」も参照)

定義

もともとの定義は冒頭で書いたように読んでそのままシンプルな「ネットの右翼」である。しかしそもそも「右翼」が包括的抽象的概念であることに加え、定義を拡大縮小して使う論者(「マナーが悪い者をネット右翼と呼ぶのだ」等々)や定義と思想傾向をごっちゃにする論者(※)が現れたことから一部で定義の混乱が生じている。

→ネット右翼の定義

(※)「右翼は○○と主張することが多い」→「右翼とは○○と主張する者のことであり○○と主張する者は右翼だ」という論法。

思想と傾向

大体のところは既存の保守・右翼と似たような思想傾向を持つ(だからこそ最初期から「ネット右翼」と呼ばれた)。かつては伝統的価値観の護持にあまり関心がないと指摘されることもあったが、最近では非嫡出子への相続分平等化判決に対して家制度の護持を掲げて熱心な反対運動を展開する場面が見られており、既存の保守・右翼の思想傾向を取り込みつつあることが伺える。逆に既存の保守・右翼の側がネット右翼サイドから発祥した思想傾向を取り込むケースも見られており、相互に地続きで影響を与え合う関係にあると言えよう。

以上の点を踏まえたうえでネット右翼に特に特徴的な部分を取り上げるとすると

時折「ネット右翼は自民党支持者だ」という指摘が見られるが、実際には=で結ばれる関係にはなく、誤った指摘である。ここらへんは街宣右翼や新右翼と同じで、「自民党も『左』過ぎて不満だが、相対的に他よりマシだし共鳴できる議員も居るから一応は支持してやる」くらいの関係であることが多い。そのため自民党より魅力的な政党が右から出てくるとそちらに支持が一部流れていく(旧たちあがれ日本→次世代の党、維新政党・新風など)。

自民党側もネット右翼を支持基盤に取り込もうと躍起であり、J-NSCの結成や東アジアニュース速報+板のコテハン上がりである三橋貴明の選挙公認、フェイスブック等を介しての安倍晋三との直接対話などに取り組んでいる。ただ最近の2014年東京都知事選挙ではネット右翼は挙って田母神俊雄を推し、自民党が推す舛添要一はむしろ共産党候補以上のネガキャン対象にされてしまった。このことからもわかるように、ネット右翼はけして自民党に飼いならされるだけの存在ではあり得ないのである。

ネット右翼を対象とした研究

大阪大学准教授の辻大介がモニター調査で無作為に抽出したサンプルを用いてネット右翼の実証的な研究をしている。それによればネット利用自体がネット右翼化につながるということはなく、特に2ちゃんねるの利用が排外主義と強く関係している。また、ネット右翼的な層は、友人の数との関連はないが、一般的に他人を信頼せず、対人関係における孤独感が強い傾向がある。因みに孤独感の高さは排外意識の高さ、嫌韓、嫌中と相関しており、嫌中より嫌韓とより強く相関している。

ネット右翼的な論調が主流を占めるサイト等

「百聞は一見に如かず」と言うことで、ネット右翼の思想傾向については実際にネット右翼的な論調が主流を占めている掲示板SNS・まとめブログ等をざっと眺めておくと理解が早くなると思われる。以下に挙げるサイトはそれらの中でも特にアクセス数や書き込み数が多い掲示板ブログや、構成員が多い団体の公式サイトなどである。

2ちゃんねる2ちゃんねるまとめサイト
ニュース速報+板 / リンクあじあにゅーす2ちゃんねる / リンク
ニュース速報板 / リンク痛いニュース(ノ∀`) / リンク
東アジアニュース速報+板 / リンクおーるじゃんる / リンク
既婚女性板 / リンクキムチ速報 / リンク
オカルト板 / リンク黒マッチョニュース / リンク
ハングル板 / リンク厳選!韓国情報 / リンク
大規模OFF板 / リンク常識的に考えた / リンク
まとめWiki等政経ch / リンク
国民が知らない反日の実態 / リンク大艦巨砲主義! / リンク
国民が知らない日本の危機 / リンク2ちゃん的韓国ニュース / リンク
選挙前.com / リンク【おーぷん】気になったニュース(`・ω・´) / リンク
SNS・団体News U.S. / リンク
my日本 / リンクネトウヨ速報 / リンク
SNS-FreeJapan / リンクハムスター速報 / リンク
在日特権を許さない市民の会 / リンク保守速報 / リンク
その他ボロロン速報 / リンク
Yahoo!ニュース(コメント) / リンクU-1速報 / リンク
ニコニコ動画(政治カテゴリ) / リンク笑韓ブログ / リンク

なお上記の2ちゃんねるまとめブログはその大半がアフィリエイトブログである。中には「厳選!韓国情報」や「News U.S.」のように、アフィリエイトを行っているにもかかわらず、2ちゃんねる側が義務付けていたニコニコ大百科への登録等を行わずに済ませたブログも散見される。後に2ちゃんねるのレス転載が全面的に禁止されたため、現在はこれらのブログの大半が 2ch.sc を経由した無断転載、およびおーぷん2ちゃんねるからの転載に切り替えている。

ネット右翼的な論調を売りとする2chまとめブログはローコストで安定した集客を見込める「優良ビジネス」であるため、金儲け目的の扇動的なアフィリエイターが入り込んでいるとの指摘もある。

ネット外での政治活動へ

最初期のネット右翼はもっぱらネット上でのみ活動していたが、やがて同志を募ってネット外も含めた様々な政治運動に取り組んでいく者が現れるようになった。現在の政治状況に対して同じような不満を持つ人々が集まっている以上、こうして現実世界へ訴え出て政治社会を変えようとする動きになるのは当然のことだったと言える。

なおこうして外へ飛び出していった人々も「ネット」右翼に含めるかは争いがあり、特に彼らが何かしらの事件を起こした際に「あれは右翼であってネット右翼ではない」という反論が登場する。ただ活動の源流がネットにあり主張や思想がネット右翼のそれと地続きであれば、それもネット右翼の活動の一種として扱われることが多い。

ただこの種の活動に携わっていた団体の幹部が逮捕された際に「ネット右翼幹部を逮捕」という見出しで報じた新聞記事に対しては、ネット右翼として扱う側からも「『ネット右翼』は集団であって組織ではないだろ」と突っ込みを入れられることになった。ちなみにこれを報じたのは日刊紙最右翼の産経新聞である。ここ数年なぜか産経はネット右翼が結成した団体に対しては他紙が無視するような不祥事を嬉々として報じたりと風当たりが強い。フジデモで事実上の後ろ盾のフジテレビを攻撃されたことを根に持っているのではないかとも囁かれているが…

ネット右翼が行う政治活動の具体例としては、簡単なものではまとめサイトや動画を作成することによる宣伝活動、抗議対象やスポンサーへの電凸・メル凸、ネット内外での署名集め、ビラ配り(しばしば「うっかり」と称して置き忘れたフリをする)などがある。露出が多くヘビーなものとして街頭での街宣(しばしば署名集めやビラ配りが併合する)、そして花形としてのデモ行進がある。どちらかと言えば簡単な活動のほうが頻度が多い。また活動の参加者募集から活動報告に至るまで、あらゆる場面でネットがフル活用されるのも大きな特徴である。

これらの活動をするにあたっては、特定のテーマ一回限りの活動としてその都度同志を募る(大抵は勝手に集まる)タイプと、組織やグループを結成して様々なテーマの活動をメンバーが継続的に行っていくタイプの二つに分かれる。

単発型

このタイプは自然発生的な色彩が強く、元の問題に対する関心が薄れると活動自体も下火になる。このタイプの運動で最も大規模なものとして2008年の変態毎日新聞問題、2011年の韓流フジテレビ批判騒動の2つが挙げられるが、これ以前にも反外国人参政権、反人権擁護法案などをテーマに単発の運動は数多く見られていた。特にフジ騒動ではなんと公称8000人を動員しての大規模デモが実現し、ネット右翼という集団がもはや無視できない政治勢力に成長していることを満天下に知らしめた。

組織型

ネット右翼と匿名の壁

ネット右翼はネットの匿名性―要するに不法行為にあたる書き込みをしない限り個人と結び付けられることがなく、しかも不法行為だったとしても被害者の泣き寝入りやIPアドレスのログ消失などで追求不能になることが多い―に助けられて初めて存在できるものであり、匿名の壁をはがされるとたちまち消えてしまうのではないかとの疑問がしばしば提示されている。

実際に匿名の壁をはがされて消えてしまったケースとして東アジアニュース板のコテハンたちの事例がある。彼らは典型的なネット右翼として10年弱に渡って朝鮮人への憎悪感情などを表明していたが、転載禁止騒動から色々あって嫌儲板との戦争に突入した際に少なからぬコテの個人情報が過去のレスから暴露され始めると、これらのコテは軒並みものすごい勢いで土下座謝罪を始め、どうか個人特定は勘弁してほしい、今までヘイトを煽ったりして本当に申し訳なかったと言い始めたのである。ここらへんの騒動の流れは「大東亜見聞録」を参照してほしい。

また2ちゃんねるの●流出騒動では●を買ってネット右翼活動を行っていた面々が今までの発言と個人名を結び付けられるのを恐れて戦々恐々とする様子が見られた(なおネット右翼活動以外にもユニークな性的嗜好の告白、知人の罵倒、勤め先の情報漏えいなど様々なレスを付けていた●持ちユーザーが怯えていた)。

その一方で堂々と実名を出して在特会などの活動に参加したり、顔出しでニコ生をしたりする剛のネット右翼も少なからずいるのも事実である。特に在特会では八木康洋副会長が職場に凸され、懲戒処分を受けたにもかかわらず堂々と活動宣言を出したことが話題を呼び、ネットニュースサイトで取り上げられたりもした。

結局のところ、「匿名だからこそネット右翼をやっている、実名と発言が結び付けられるならヘイトなんかやらず大人しい発言だけしてる」というネット右翼もいれば、「ヘイト的な発言もちゃんと正当な理由があってしている、それと実名が結び付けられて社会的評価が悪くなるのであればそりゃ世間のほうがおかしい」とする勇敢なネット右翼もおり、ここらへんは個人の覚悟や意気込み、自分の発言に対する自信と信念の問題とも言えるだろう。

評価と批判

上述したように概ね右派ないし反左派の主張をしていることため、左派勢力から批判を受けることがしばしばある。その一方で、保守・右翼勢力からは「自虐教育やマスコミの洗脳から目覚めた国民」などと肯定的な評価を受けることも多い。例えば片山さつきや和田政宗など保守系の政治家や、ジャーナリストの一部には、ブログTwitterなどを通じてネット右翼と積極的な交流を持ち、国会メディアで彼らの代弁者として声を紹介する一方で、デモや署名による世論形成を呼びかけるなど蜜月関係を築いているケースも見られる。

しかし最近では、

安倍晋三は参院予算委員会で、人種や宗教などで、ある集団をおとしめたり暴力や差別をあおったりするヘイトスピーチ(憎悪表現)が国内で増えていることについて「一部の、民族を排除する言動があるのは極めて残念なことだ」と述べた。

といった安倍晋三によるヘイトスピーチ批判をはじめとし、国籍法問題などでネット右翼と共同歩調を取っていた右派の城内実衆議院議員や、「ゴー宣」「戦争論」などでネット右翼台頭の先鞭をつけた漫画家の小林よしのりらなどからも「ネット右翼批判」が現れてきている。また、ヘイトスピーチに対抗した反ヘイトスピーチとも呼べる活動も見られるようになっている。少なくとも、憂国を掲げる彼らにとって、他ならぬ国家政権を担う人物から批判を受けたことは、決して追い風となる出来事ではない。

”ネット右翼”という言葉への批判

前述の通り、「ネット右翼」というこの言葉の使用そのものについて批判的・否定的な考えを持つ者もいる。とりわけ、自身のことをそう呼ばれた経験がある、あるいは該当しうる行動を起こしていたり、それに同調したりする者の多くは、この言葉に対してきわめて否定的な姿勢である。

単に言葉の使用を許容しないだけでなく、「ネット右翼なる者は存在しない」、あるいは「日本人がネット右翼などという言葉を使うことはありえないから、使う者は日本人ではない」などの反論もみられる。

以下は、本記事に寄せられた、批判側による論拠とされる主張のひとつである(これが全てではない)。

批判側の主張(言葉の使用者について)

”ネット右翼”という単語はある特定の話題に集中して用いられる。言ってみれば特定の話題になると「ネット右翼」と批判する人間が出てくるということである。下記の「ネット右翼的な論調が主流を占めるサイト等」を見ても分かるように政治の話題、特定・民族の話題を多く取り扱う場所でそれらを批判するために用いられる。具体的に言えば「ネット右翼」という単語は「在日朝鮮人」や「韓国」の話題に対して集中して使われる。一方で保守的な人間と対立関係にありそうな北朝鮮中国などの話題ではこれらの単語が使用されることは多くない。本記事中にその名が登場するジャーナリストである安田浩一や李信恵、民主党の有田芳生やカウンターデモを行うしばき隊などは全て韓国・民団(在日朝鮮人)に関わる人物である。一部では「中国人に対して憎悪を抱いている人間もネット右翼に含まれる」という主張があるが、中国中国人北朝鮮の話題を取り扱っている際の2ちゃんねるのまとめサイトや保守系サイトまたは中国に対する抗議行動でこれらに対し「ネット右翼」という批判が行われることは殆ど無い(1999年に登場した単語であるはずなのに2008年の中国政府によるチベット弾圧時の抗議活動は「右翼団体」という表現は用いられても「ネット右翼」による抗議という報道は全くされなかったため)。つまり「ネット右翼」という言葉は”朝鮮人に対して批判を行う者”に向けられる言葉といえる。

在日朝鮮人向けの民団新聞で自身らの批判者を「ネット右翼」の単語を多用して批判していることを見ても分かるように、「ネット右翼」という単語が一般的に普及したのは日本に嫌韓感情が広まってからである。これらの感情が広まった原因として上げられるのは2011年のサッカー韓国代表の奇誠庸の日本人の侮辱問題、2012年の韓国大統領李明博の竹島上陸や(自分で招待しておいて)「天皇韓国に来るなら土下座しろ」発言、在特会の抗議活動に対する在日朝鮮人の暴力行為などが挙げられる。これらにより一般の層まで嫌韓が広まり、チベット弾圧時の在日中国人の応対より暴力的な在日朝鮮人に対して非難の矛先が向かうようになった。この批判を躱すために使用された言葉が「民族差別」であり「ヘイトスピーチ」である。

在日朝鮮人とその支援者はこれらの朝鮮人への批判を向ける者を「ネット右翼」と定義し逆に批判した。これがネット右翼という単語の使用者が朝鮮人関係者に集中している原因である。

関連項目


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