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森友問題と憲法 誰のために奉仕するのか

霞が関はもちろん、永田町で国政に関わる人たちに素朴に問いたい。そもそも憲法を読んだことがあるのか。

すべての公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない(15条)。この大原則は、国家公務員法や地方公務員法でも明記されている。

安倍晋三ら閣僚、衆参両院議員らも特別職の公務員である。公益に反して特定の個人や組織のために奉仕することは、「違憲行為」である。

典型例は森友学園問題ではないか。国有地売却を巡る破格の値引きだけではない。財務省幹部は平気で事実に反する国会答弁を繰り返した。その上、決裁文書から安倍昭恵政治家の関与をうかがわせる部分を削除する“偽装”に走り、国会や国民の目を欺こうとした。

政治的な意図や官僚忖度(そんたく)がどう働いたのか、事実関係は判然としない。自ら命を絶った財務省職員もいる。ここは徹底解明を図るのが筋である。

にもかかわらず、与党は関与を否定する安倍晋三らを擁護し、幕引きを急ぐ。時の権力者におもねり、国民の期待には応えようとしない。そうした姿勢も、奉仕すべき相手をはき違えた「違憲行為」ではないか。

政治家官僚に読み返してもらいたい条文は他にもある。

憲法を国の最高法規と位置付けた98条、その憲法に従うべき人を明示した99条である。

前者は憲法の条規に反する法律、命令、国務に関する行為は「効力を有しない」とする。

後者は天皇をはじめ、国務大臣、国会議員、裁判官ら公務員こそが「憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と規定している。

これらに照らして、安倍晋三政権の歩みはどうか。閣議決定であっさり憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認した安全保障関連法の制定はもちろん、森友学園問題を脇に置いて憲法9条などの改正に走ろうとする姿勢も気掛かりである。

憲法上、改憲の発議は国会が行う。故に「発議は国会の責務である」と安倍晋三らはいう。しかし、判断するのはあくまで国民である。発議は国の在り方を深く見つめ、幅広い民意を反映したものでなければならない。

自民党が取りまとめた改憲案は到底、この域に達したものとはいえない。党内での議論は生煮えのまま、安倍晋三の意向が先行した独善の印象が否めない。

“釈迦(しゃか)に説法”といわれてもあえて指摘しておきたい。

憲法がうたう主権者は国民である。この理念を曲げようとする者に為政者の資格はない。そして国民の目は決して節穴ではない。今国会ではまさに、立憲主義の根幹が問われている。


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