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森功が看破 モリカケ問題の根底は「安倍晋三夫妻ビジネス

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あらゆる疑惑が今もくすぶったままだ。愛媛県今治市に2018年4月、開学した加計学園の岡山理大獣医学部。安倍晋三が「腹心の友」と公言する加計孝太郎に「便宜」が図られ、獣医学部設置が決まったのではないか――。

2017年3月から1年以上にわたって国会で追及され続けてきた「加計学園問題」は2018年4月、当時の柳瀬唯夫が愛媛県や今治市職員と面会した際に「本件は安倍晋三案件」と発言していたという文書の存在が発覚。疑惑が再燃した。「悪だくみ『加計学園』の悲願を叶えた安倍晋三の欺瞞」(文藝春秋)の著者で、この問題を追い続けるノンフィクション作家の森功に改めて問題の本質を聞いた。

国家戦略特区で規制緩和の弊害が拡大

――まず、加計学園問題を取材するきっかけを教えてください。

もともと、構造改革特区や小泉純一郎内閣の規制緩和に疑問を持っていました。例えば、特区構想のひとつである株式会社立高校では、国から学校に支払われる就学支援金を当て込んで、幽霊生徒でぼろ儲けしている実態がありました。国家戦略特区は、それがバージョンアップされて形を変えただけ。加計学園問題の本質も構造改革特区の問題の延長にすぎないのです。

――国家戦略特区制度のどういう点を不審に思い、調べたのでしょうか。

国家戦略特区とは規制緩和です。教育特区を活用した株式会社立高校ではろくに勉強せずに卒業できる仕組みになっているなど、規制緩和による弊害があり、それを検証しようと思いました。そこで特区制度で2017年4月に新設された千葉県成田市の国際医療福祉大医学部を取材すると、土地の無償貸与と補助金をめぐり、地元から「おかしいよね」という声が多数あることが分かりました。

その後、森友学園の国有地払い下げや、特区制度を使った加計学園・獣医学部新設の問題に注目が集まったため、国際医療福祉大よりも根が深そうな加計学園に取材の軸足を移しました。

――2018年4月、2015年4月2日に愛媛県と今治市の職員、加計学園関係者が官邸を訪問し、当時の柳瀬唯夫と面会した際の文書の存在が明らかになりました。どう思いましたか。

率直に言って、ようやく(文書が)出てきたな、という感じです。愛媛県や今治市、加計学園の幹部がわざわざ官邸を訪ね、1時間半も会議をしているわけですから、やりとりを記した文書が存在するのはある意味、当然のことだからです。愛媛県の中村時広は「備忘録」と言葉を濁していますが、行政文書に近いと思いますね。ただ、なぜか、その文書が「ない」とされてきたのです。

――いつ出てきても不思議ではない文書だったのですね。

いわゆる「愛媛文書」の存在は、NHKのスクープ報道がきっかけです。これによって、県は文書が本物かどうか、中身を含めて正直に答え、そこに柳瀬唯夫の名前が記されていた、ということでしょう。これは当然の対応ですが、一方で今治市はいまだ柳瀬唯夫との面会を認めていない。その問題もあります。

――それでも安倍晋三は加計学園が獣医学部をつくることを知ったのは「2017年1月20日」と強弁しています。

加計孝太郎は第1次安倍晋三政権の前から千葉科学大で獣医学部をつくろうとしていました。おそらく加計孝太郎安倍晋三と獣医学部新設についてずっと密に連絡を取り合っていたと思います。加計学園問題がこれほど大騒ぎになっていなければ、もしかしたら愛媛と千葉に2つの獣医学部ができていたかもしれません。

――安倍晋三政権は誰でもわかるウソをなぜ、つき続けるのでしょう。

誰がどう考えても柳瀬唯夫は愛媛県や今治市の職員と会っているとしか思えないのだけれど、安倍晋三秘書官というのは安倍晋三の代理ですから、仮に認めてしまうと、面会自体が安倍晋三案件になってしまう。だから、会ったことは絶対に言えないし、野党に追及されても「会ってない」と言わざるを得ないのでしょう。

強固に安倍晋三を守る経産省財務省が対抗

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――そんな柳瀬唯夫をめぐり2018年4月23日の国会招致が浮上しています。

正直言って証人喚問をしてもあまり期待できません。「記憶の限りにおいては」などと枕ことばをつけて否定することが容易に想像つくからです。おそらく、柳瀬唯夫はこれを繰り返さざるを得ないし、それだけの覚悟もできていると思います。野党がここを切り崩すのは難しいでしょう。<刑事訴追の恐れがないから追及しやすい>といった観測もありますが、甘いでしょうね。

――森友問題佐川宣寿と同様、国会招致でも疑惑は晴れず、何も変わらないということですか。

「記憶の限り」という枕ことばをつければ偽証罪には問われない。ならば、柳瀬唯夫がいかにオカシな証言をしているかということを浮き彫りにするためには、野党が努力するしかありません。例えば、官邸の入館記録が残っていないことを問題にするべきでしょうし、官邸の会議録が存在していないという不自然さをもっと追及するべきでしょう。

――霞が関官庁はなぜ、そうまでして安倍晋三政権を守ろうとしているのでしょうか。

霞が関官庁というよりも、安倍晋三に近い取り巻きの人たちでしょう。例えば柳瀬唯夫だけでなく、安倍晋三秘書官の中で経産省グループは財務省よりも突出して安倍晋三に対する忠誠心が高い。衆院予算委でやはり経産省出身の佐伯耕三が野党議員にヤジを飛ばしていましたが、安倍晋三を守るという強固なスタンスが一貫していますね。

特区の議論はトップダウンの出来レース

――森友問題の国有地売却で決裁文書改ざんが明らかになった財務省も同じということでしょうか。

おそらく財務省の中で、安倍晋三に覚えめでたい経産省よりも「後れをとっている」という強い危機意識があるのではないでしょうか。推測ですが、森友問題は、財務省経産省に対抗し、安倍晋三に対してアピールしたために問題が起きたのではないかと思っています。

――著書「悪だくみ」の中で森友問題は「第2の加計」と言っていますね。

兵庫県神戸市にある加計グループの「御影インターナショナルこども園」で安倍昭恵が名誉園長をやっていることに、森友の籠池泰典が着目し、<うちも安倍昭恵を名誉校長にすれば発展できるだろう>と考えたのは容易に推測できる。実際、その後、籠池泰典夫妻は安倍昭恵と一緒にこども園や広島県福山市の英数学館に足を運んでいますからね。

その意味では一連の問題の原型は加計であり、森友が第2なのです。教育の名のもとに安倍晋三安倍昭恵をうまく介したビジネスモデルと言っていいでしょう。

――安倍晋三安倍昭恵はその教育ビジネスのために利用されたということですか。

安倍晋三などの興味は、ビジネスというよりも教育勅語に象徴されるような愛国心を植えつける教育です。どう実現していくかを考えた時に利用したのが規制緩和。つまり教育の自由化です。小泉純一郎からの流れですが、特区制度を活用した株式会社立の学校も含め、新規参入を容易にする仕組みづくりに力を入れてきた。その過程で公私混同というのか、さまざまな思惑が絡み、問題が起きたのだと思っています。

――まさに行政の私物化が起きたと。

特区という規制緩和によってある意味、行政の「利権化」のパターンが出来上がってしまった。その結果、加計学園のように首相との関係を背景にしたエコヒイキが生まれ、その利権をうまく利用した業者が甘い汁を吸う。それがまさしく「行政の歪み」の構造というわけです。

――国家戦略特区の制度そのものに問題があると。

国家戦略特区のワーキンググループ(WG)について安倍晋三は「一点の曇りもない」とか言っていますが、都合の良いことしか議事録に載せていないから「一点の曇りもない」に決まっています。一番の問題は安倍晋三がトップの議長として決めてしまうことでしょう。かつての労働政策審議会(労政審)のように、徹底的に議論し合う審議会もありましたが、大半は官僚が主導して「こうしましょう」ということに追随しているのが実態です。

国家戦略特区の場合、内閣府の藤原豊が音頭をとって、その上に和泉洋人がいて、方向を決めて導いていった。こういう仕組みを変えない限り、加計学園問題のような事態はまた起きるでしょう。


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