ひとりで罪をかぶるつもりなのか――。財務省の決裁文書改ざん問題で、2018年3月9日に「引責辞任」した佐川宣寿(60)。安倍晋三官邸は、改ざんが一から十まで理財局内で行われたとして、当時の理財局長だった佐川宣寿を「主犯」に仕立て上げようと躍起だ。森友問題で悪名を馳せた「官邸の守護神」は、このままいくと官邸の「汚れ役」で生きていくしかなくなる。
「佐川宣寿の答弁に合わせて、書き換えたというのが事実だと思っています」と全責任を転嫁した麻生太郎に続き、2018年3月16日の衆院財務金融委員会で、身内だったはずの太田充までが、「(佐川宣寿の)関与の度合いは大きかったのではないか。(改ざんを)知っていたと思う」と突き放した。
「改ざんは佐川宣寿だ、佐川宣寿、みな佐川宣寿」で、仕えた上司に詰め腹を切らされ、かつての部下に見放された佐川宣寿。36年間務めた財務省を石もて追われるように去り、「バラ色のセカンドライフ」は、見事なまでに砕け散った。
「本来、国税庁長官OBには引く手あまたの天下りライフが待っていたはず。過去には“渡り”と称して複数の企業・団体の役職を経験し、8億円も稼いだツワモノもいましたが、今や“傷モノ”の佐川宣寿を受け入れる天下り先は皆無でしょう」(財務省関係者)
不運は重なるもので、佐川宣寿は2018年3月16日、高松市の男性に虚偽公文書作成容疑などで東京地検特捜部に刑事告発された。
安倍晋三官邸にセカンドライフを潰されたとはいえ、国税庁長官を約9カ月務めた報酬はかなり高額だ。もちろん、その原資は血税である。
「一般論として、国税庁長官の年収は約2193万円で、月給は約133万円。36年間勤務して退職した場合、約4999万円の退職金が支給されます」(財務省広報室)
減給処分を受けて手にする退職金はもっと減るが、さらに禁錮刑以上をくらうと退職金は満額ゼロ。1銭ももらえない。ちなみに、虚偽公文書作成罪の刑期は「1年以上10年以下の懲役」だ。退職金ゼロで佐川宣寿が路頭に迷う可能性は十分にある。
「もし刑事訴追されたら、再就職先を見つけることすら困難となる。世田谷区の豪邸の住宅ローンはまだ残っているようですが、大丈夫でしょうか」(前出の財務省関係者)
佐川宣寿は来週にも証人喚問される見通しだ。何もかも失った以上、公僕としての良心がまだ残っているなら、佐川宣寿は国会で洗いざらいぶちまけたらどうか。
「政治家に忖度したところで良いことはないのに、佐川宣寿が自発的に行ったとは考えにくい。何らかの指示や圧力があったのでは、と考えるほうが妥当ではないでしょうか。『辞める』という責任の取り方よりも、形はどうであれ人前で真相を話すべきだと思います。国民に仕える公僕としての意識に立ち返っていただきたいですね」(高千穂大教授の五野井郁夫)
前川喜平のようになるか、それとも、官邸の「汚れ役」を買って出るのか。ここで“正義の人”になっておかなければ、第二の人生はその風貌を生かし、本当に「汚れ役」専門の売れない俳優になるくらいしか道は残されていない。