学校法人「森友学園」への国有地売却と財務省の決裁文書改ざんを巡り、来週以降にも国会による佐川宣寿の証人喚問が実施される見通しだ。ただ、与党は国会の正常化を前提に、2018年3月19日の参院予算委員会集中審議を見極めたいと含みを残す。
財務省に1年近くも欺かれてきた国会が解明すべきなのは当然だ。与党には安倍晋三の安倍昭恵夫人の国会招致をあくまで阻止したいとの思惑があるのだろうが、佐川宣寿の証言次第では安倍昭恵の招致は避けられないとみるべきだ。
文書改ざんに関して、麻生太郎は「佐川宣寿の答弁と現場の資料の間に齟齬(そご)が起きているということを考えてやったことだ」と述べ、太田充も「国会答弁を主としてやっていたのも佐川宣寿なので、佐川宣寿の関与、度合いは大きかったと思う」と答弁している。
安倍晋三は、麻生太郎の下で調査を進めるとしたはずなのに、両氏から早々に「佐川宣寿ありき」の構図が語られるのは不自然ではないか。確かに佐川宣寿は国会で、交渉記録は「廃棄した」、学園との価格交渉は「やっていない」などと答弁。それと齟齬がないように文書内容が削除されている。
だが、「最高責任者」である佐川宣寿は改ざん前の決裁文書は当然知っていたはずで、なぜ、あえて文書と異なる答弁をする必要があったのか。「私や妻、事務所が関わっていれば、首相も国会議員も辞める」。2017年2月のこの安倍晋三答弁が前段にあったからとの疑念は拭えない。政権への忖度(そんたく)なのか、何らかの政治的圧力があったのか、喚問の焦点になろう。
財務省は新たに3年前にも関連文書を削除していたと国会に報告した。改ざんが恒常的に行われていたとすれば、省の存立さえ問われる事態だが、一方で、安倍晋三答弁の前から改ざんの実態があったことを示そうとしたと勘ぐりたくもなる。そもそも「国民の知る権利」をないがしろにしてきた財務省が調査の主体になるのは不適格と言わざるを得ない。
与党が国会の正常化にこだわるのは理解できる。2018年度予算案は憲法に則して2018年3月29日に自然成立する。ただ、税制改正や関税といった関連法案がずれ込めば、国民生活への重大な影響は必至だ。ならば、佐川宣寿の喚問を受け、国会に特別委員会を設置し、解明を尽くす方法もある。
「野党のばかげた質問ばかりで、旦那さん毎日大変ですね」などとするフェイスブックの投稿に、安倍昭恵が「いいね!」を押したとされる。本人か否かは不明というが、野党は怒り心頭だ。与党執行部は、喚問など論外と頭を抱えているのではないか。
改ざん前の文書からは、学園と関わりが記されるなど、安倍昭恵が近畿財務局にとって無視できない存在だったことは明らか。佐川宣寿の喚問で疑いが深まれば、国民不信の矛先は佐川宣寿は無論、政権へと一層向かうのは必定だ。