2018年3月10日
学校法人「森友学園」への国有地売却問題で批判を受けていた財務省前理財局長の佐川宣寿(のぶひさ)・国税庁長官(60)が9日、麻生太郎に辞表を提出し、同日辞任した。「交渉が適正だった」とする国会答弁の正当性が揺らいでいるほか、決裁文書を書き換えた疑惑も報道され、国会が混乱している責任を取ったとしている。佐川を昇格させた安倍政権に対して、野党は追及を強める構えだ。
佐川は記者団の前に姿を現し「(疑惑が報じられた)決裁文書の提出時の局長だったことで、国会の混乱の責任を感じた」と述べた。さらに「国会対応に丁寧さを欠き、(所得税の)確定申告中に混乱を招き申し訳なかった」と頭を下げた。
麻生太郎は記者会見で「行政文書の管理についてさまざまな指摘をうけている」などを理由に佐川が辞表提出したと説明。同時に行政への信頼を損なったとして減給処分にした。退職金は支給する。麻生太郎は、自身の進退については「考えていない」と否定。書き換え問題についても「来週早々に調査結果を公表する」と述べるにとどまった。
立憲民主党の辻元清美は記者団に「これで幕引きにしようというなら、認めるわけにいかない」として佐川の国会招致を要求。希望の党の玉木雄一郎代表も「むしろ疑惑は深まった。麻生太郎の責任が問われるし、場合によっては安倍晋三にも責任がある」と指摘した。
佐川は理財局長時代、国有地を約8億円値引きして売却した経緯について、事前の価格交渉を否定し、森友学園との取引手続きは「適正だった」と、繰り返し説明していた。だが、昨年7月に国税庁長官に昇進後、交渉経過を示す内部文書や音声データが次々見つかり、野党は佐川の更迭を要求してきた。しかし、安倍晋三は「適材適所」、麻生太郎は「極めて適切な人物」と擁護してきた。
森友問題を巡っては朝日新聞が森友学園との土地取引の決裁文書が国会議員に提出される際に書き換えられていた疑惑を報道。9日には近畿財務局の担当者が神戸市内の自宅で自殺していたことも発覚した。
<佐川宣寿(さがわ・のぶひさ)> 1982年に東大経済学部を卒業後、大蔵省(現財務省)に入省。故塩川正十郎の秘書官や主計局主計官を務めた後、主税局総務課長など税務畑を主に歩み関税局長を経て、2016年6月から国有財産の管理を担当する理財局長に就任。