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加計学園問題

加計学園問題(かけがくえんもんだい)とは、国家戦略特別区域に指定された今治市における加計学園グループの岡山理科大学獣医学部新設計画をめぐる問題。

2017年1月、前川喜平文科省天下り斡旋問題のため引責辞任していた。 内閣府は岩盤規制改革を進めており、従前から前川喜平が率いる文部科学省と対立していた。内閣府と文部科学省、政府与野党、自治体、獣医学会およびメディアの攻防が報じられた。

獣医学部設置の経過

1984年以降、既存の16大学以外が獣医学部を新設することを認めず、社会的需要の観点から文部科学省が定員拡大を抑制した。2007年から今治市は15回にわたって構造改革特区を利用した獣医学部の新設を求めたが、文科省は、高度専門職業人たる獣医師養成には、従前の高度専門職と同様、全国的見地から対応することが適切だとして、特区活用による獣医学部の新設は認めなかった。

2013年、第2次安倍晋三内閣の下で国家戦略特別区域が制度化され、2015年6月に内閣府が「現在の提案主体による既存の獣医師養成ではない構想が具体化し、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり、かつそれらの需要について、既存の大学学部では対応が困難な場合には、近年の獣医師の需要の動向を考慮しつつ全国的な見地から検討する」ことを閣議決定、獣医学部新設を募集。2016年1月に今治市が国家戦略特別区域の指定を受ける。10月7日、政府ヒアリングに対し、京都府と京都産業大学が獣医学部設置構想を提示したが、11月9日、国家戦略特区諮問会議が「広域的に獣医師系学部が存在しない地域に限り」獣医学部の新設を可能とする法改正の実施を決定。

2017年1月4日、内閣府が今治市で2018年4月に獣医学部を開設可能な1校を募集し、1月20日、事業者として加計学園を選定。加計学園(岡山理科大学)は3月31日に文部科学省に設置認可を申請した。文部科学省の大学設置審議会の審査においては、過大な定員数や閣議決定時の認可条件(上述)との齟齬部分、実習計画の不透明さ並びに教員配置等、計7件の是正意見が付き、学園側の改善を経た答申の段階においても8件の留意事項が付されたが、11月10日、学部新設を認可された。2018年4月に開学予定であり、日本国内では52年ぶりの獣医学部新設大学となる予定。

安倍晋三のご意向」文書報道の経過

5月17日、朝日新聞が「安倍晋三のご意向」等と記された文部科学省の文書の存在を報道菅義偉は「全く、怪文書みたいな文書じゃないか。出どころも明確になっていない」述べた。

5月19日、5月22日、文科省内の共有フォルダを調査、松野博一が文書の存在を確認できなかったとし、追加調査を行わない方針を示した。

5月22日、読売新聞が「前川喜平 出会い系バー通い 文科省在職中、平日夜」との見出しで告発者である前川喜平喜平が文科省の在籍中に新宿歌舞伎町の「出会い系バーへ頻繁に通っていたことを報道

5月23日、東京新聞は2016年11月9日の国家戦略特別区域諮問会議(議長:安倍晋三)は獣医学部設置の地理的条件の「獣医師系養成大学等の存在しない地域」との素案に「広域的に」と「限り」を加え、文部科学省の「既存の大学・学部では対応が困難な獣医師養成の構想が具体化」という修正案は通らなかったと報じた

5月25日、前川喜平が記者会見を行い、「あったことをなかったことにはできない」とし、「平成30年4月開学を大前提に逆算して、最短のスケジュールを作成し、共有していただきたい。これは官邸の最高レベルが言っていること」「安倍晋三のご意向だと聞いている」とされる文書の存在について「獣医学部の新設について、自分が昨年秋に、担当の専門教育課から説明を受けた際、示された」と証言、2016年9月28日の打ち合わせで「『獣医学部新設に係る内閣府からの伝達事項』との文書を示されたと記憶している」と述べた。これらの文言に対し「誰だって気にする。圧力を感じなかったといえば、うそになる」と述べ、最高レベルとは「トップは総理、次なら官房長官、2人のことかなと思った」と語った。「内閣府の言い分は『トップダウンで決めるから文科省は心配するな』ということだと受け止めた」「踏むべきステップを踏めず、筋を通せなかった。『こんなことは認められない』と私が内閣府に対して強く主張して筋を通すべきだった。反省している」と述懐した。「あったことをなかったことにはできない」「在籍中に共有していた文書で確実に存在していた」「具体的な将来需要が示されず、文科省として負いかねる責任を負わされた。官邸、内閣府、官房など中枢からの要請に逆らえない状況がある」と述べ、証人喚問があれば応じる意向を示した。

5月31日、前川喜平は和泉洋人から獣医学部新設を急ぐよう直接要請されていたことを明かし、「安倍晋三は自分の口からは言えないから、私が代わりに言う」との発言もあったとしたが、和泉側は内容を否定し、前川喜平との面識はあるものの、面会時期については記録がなく確認できない、とした。

6月2日、民進党の加計学園疑惑調査チームは内閣府が文科省に対して「官邸の最高レベルが言っていること」と圧力を仄めかしたメール文書と添付ファイルの写しを公開した。メールをやり取りしたのは文科省専門教育課の職員と、内閣府の行政改革推進室の管理係長とされており、「280926藤原内閣府審議官との打合」との名前で添付されたファイルの文面に官邸の圧力が掛けたと示唆される、一文が発見された。

6月6日、文部科学省現役職員から文書の共有があったとする証言が得られたと朝日新聞報道

6月13日、参議院農林水産委員会において、義家弘介は内部告発者について国家公務員法(守秘義務)違反になる可能性があると述べた。

6月14日、追加調査を行わないとしてきた内閣府が内部調査を行うと発表した。6月15日、松野博一は「官邸の最高レベルが言っている」「安倍晋三のご意向だ」などと記され、民進党が調査を求めていた19の文書について、文部科学省の専門教育課のコンピュータ内の共有フォルダ内に、同内容または酷似した内容の文書が14、確認できないものが2とし、3つの文書については「学校法人の利益に関わる内容」として「現時点では存否を含め明らかにできない」と発表、「前回確認できなかった文書の存在が明らかになったことは大変申し訳なく、真摯に受け止めている」と述べた。

同日、文部科学省は、2016年11月9日の国家戦略特区諮問会議に提出された「国家戦略特区における追加の規制改革事項について(案)」に、「広域的に」と「限り」の文言を付け加えるよう、「指示は藤原いわく、官邸の萩生田からあったようです」とした内閣府から文科省に送信されたメールの存在を公表した。萩生田光一は「修正の指示を出したことはなく、文科省が公表したメールの内容は事実に反する」と否定した。

情報保全

山本幸三が2016年11月、日本獣医師会に「四国で新設」と伝えたとされる問題で、2017年7月21日、この発言に関する秘書官のメモ、及び自身が作成した学部新設費用の積算メモについて、既に廃棄済みと説明した。

2015年6月5日に国家戦略特区ワーキンググループが獣医学部新設を巡って愛媛県に行ったヒアリングのなかで、愛媛県側が抵抗勢力があるとの理由で、議事録を非公開とするよう求め、座長の八田達夫が了承していたことが明らかとなった。このやり取りは、2017年8月25日に公開された議事録の中で明らかとなっており、内閣府が3月に公開した議事要旨は該当部分を省略し、「公開でいいか」との質問に対し、愛媛県が応じたことになっていた。

国会

2017年3月13日、参議院予算委員会で社民党の福島瑞穂が「安倍晋三は理事長と長年の友人だ。政策がゆがめられているのではないか」と質問、安倍晋三は「理事長から頼まれたことはないし、働き掛けていない」「もし働き掛けて決めたならば責任を取る」「特定の名前を出すのは確証がなければ極めて失礼だ」「安倍晋三政権のイメージを落とそう、安倍晋三をおとしめようと質問するのはやめた方がいい」と述べ、「鳥インフルエンザなどの人獣共通感染症が拡大する中、需要が高まっていることから獣医学部設置を特区のメニューとして追加した」と説明、今治市が用地を無償提供したとの一部報道に対し「無償譲渡の例は20年間で25例ある。今治市が決めたことで、私は影響の及ぼしようがない」と述べた。

5月22日、参議院決算委員会にて、日本共産党の小池晃が「加計学園ありきで特区の決定が行われたことは明らか」と追及、山本幸三は、「地域を限定することが適当だと私が判断した。加計学園ありきではない」と答弁した。

5月26日、民進党共産党自由党社民党は、一連の問題等を「国会最大の争点」と位置づけ、証人喚問を要求。

6月13日、参議院農林水産委員会において、義家弘介は内部告発者について国家公務員法(守秘義務)違反になる可能性があると述べた。

7月10日に参院閉会中審査、7月24日と25日に衆参予算委員会閉会中審査が行われた。

国会議員による発言

この節に雑多な内容が羅列されています。事項を箇条書きで列挙しただけの節は、本文として組み入れるか、または整理・除去する必要があります。(2017年6月)

漆原良夫は「忖度を強制、強要する動きがなければしょうがない。役人が勝手に忖度しただけでは法的に全く意味がない」と述べた。

玉木雄一郎は日本獣医師会の総会で「おかしな方向に向かいそうになった際はしっかり止める」と発言した。

安倍晋三は第193回国会を終えた2017年6月19日、加計学園問題について、「対応が二転三転し、国民政府に対する不信を招いたことは率直に反省しなければならない。信なくば立たずだ」「真摯に説明責任を果たしていく」と述べ、「必ずしも国民的な理解を得ることはできていない」としつつ、「国会の開会、閉会にかかわらず、今後も分かりやすく説明していく努力を積み重ねていく」「印象操作のような議論に対し、つい強い口調で反論してしまう私の姿勢が、結果として政策論争以外の話を盛り上げてしまった。深く反省している」「改革を後退させる発想であり、誠に残念でならない」「人材を積極的に登用し、党でも政府でもしっかりした体制をつくることが必要だ。これからじっくりと考えていきたい」と述べた。

小野寺五典は2017年7月24日に行われた国会の閉会中審査において、「一番中立である、例えば、ワーキングチームの座長の八田さんから一点の曇りもないという話があった。そして、加計学園と競合した京産大は『不透明な決定とは思わない。納得できない部分も特にない』。京都府知事も『われわれとしては努力が足りなかった』などといっている。競争相手も適正だと言っている。なぜか国会の中の議論で、役所の中からいろんな文書が出ているのがこの問題の本質だと思っている。」と発言している。

足立康史は、「朝日新聞死ね。」、「(石破茂・玉木雄一郎・福山哲郎に)私は犯罪者だと思っています」と発言し、問題視されている。

詳細は「足立康史#朝日新聞と加計学園問題に対する発言」を参照

関係者による発言

加戸守行は、同閉会中審査における加戸の前川喜平への批判をいくつかのメディア報道しなかったとして、「報道しない自由があるのも有力な手段、印象操作も有力な手段。マスコミ自体が謙虚に受け止めていただくしかない」と述べた。10月8日、安倍晋三も「証言された次の日に全くしておられない」「新聞をよくファクトチェックしていただきたい」と同調したが、日本報道検証機構は検証の結果、この認識は不正確であると指摘した。なお批判を受けた朝日新聞社自身も、見出しつきで報じていると反論している。

今治市の市民団体「今治加計獣医学部問題を考える会」は、加計学園が建築費を実際より高めに見積もり市に補助金を申請した疑いがあると主張しているが、加計学園側は否定している。

日本獣医師会は、特区活用による獣医師学部の新設について反対している。その理由として、特区活用の目的の一つである卒業者の職域及び特定地域への就労の義務づけは困難であり、農林水産省が示した就労地域や職域偏在の是正に資さないこと、また教育の質の維持向上という現状の根本課題の改善に資さないことを挙げ、特区活用とは異なる方策を提示している。2017年1月30日の会長短信では設置基準等に照らした厳密な審査が行われるよう、文部科学省等に要請を行っていく予定であることを公表している。

韓国人留学生について

2017年11月に加計学園獣医学部は140人の定員の内、20人を海外留学生の留学枠として、韓国現地で留学生を募っていたが報道された。ソウルで行われた説明会では加計学園の関係者も参加していた。誘致のパンフレットには「日本の獣医師は高収入」「韓国内の獣医師免許も取得できる」とPRしていた。

新聞社による論説

読売新聞は社説で「既得権益を持つ業界の意向を重視しがちな所管省庁と、安倍晋三主導で規制改革を進める内閣府の対立は避けがたい」とし、「政府が、加計学園を優遇したとの疑いを否定するには、規制緩和の一連の経緯や、今治市や四国の地域事情などについて、掘り下げた説明を尽くさねばならない」と論じた。

朝日新聞は社説で「問われているのは安倍晋三自身と、安倍晋三側近で、学園系列大学の名誉客員教授を務める萩生田の関与の有無だ。国民が納得できるまで説明を尽くす重い責任があることを、安倍晋三は自覚すべきだ。」と論じた。また、「文部科学省の内部告発者は、守秘義務違反に問われる可能性があるのか。公益のための通報者として保護されるべきではないのか。議論が起きている。」とし、「文科省をはじめ政府がなすべきは、告発者の口をふさぐことではなく、異論や批判に耳を傾けることだ」と論じた。

毎日新聞は社説で「文書の存在がはっきりした以上、実際に「安倍晋三の意向」があったのか、内閣府側の「そんたく」だったのかが焦点になる。」とし、「国会の場で、前川喜平に証言してもらい、真相をはっきりさせなければ、疑問は解決しないだろう。」と論じた。また、読売新聞前川喜平のスキャンダル報道への批判に対して読売新聞東京本社社会部長原口隆則が「不公正な報道であるかのような批判が出ている。こうした批判は全く当たらない」「一般読者の感覚に照らしても、疑念を生じさせる不適切な行為であることは明らかである」「次官在職中の不適切な行動についての報道は、公共の関心事であり、公益目的にもかなうものだと考える」などと反論する展開は「異様」だと評した。

2018年1月30日には、同紙・統合デジタル取材センターのTwitterが岡山理科大学獣医学部の志願者数が1000人超とする自社ニュースに「これでいいのか」とコメントして引用、批判が殺到し謝罪に追い込まれた。

産経ニュースは、「加計学園問題」の特集ページで「学園の理事長が安倍晋三の友人である個人的関係が学部新設の許認可に影響を与えたとの疑惑を生み、野党の政権追及材料となっている。」と解説している。また、朝日新聞などが加戸の発言を報じないことについて、インターネット報道しない自由ではないかと物議を醸しているとし、メディア不審を生じさせていると報じている。

日本経済新聞は、獣医学部の新設を阻んできたこと文部科学省の姿勢を批判し、38年ぶりに医学部の新設が認められた千葉県成田市の国際医療福祉大学を引き合いに、岩盤規制こそが問題であると論じた。

日本放送協会(NHK)は、国家戦略特区の「透明性・公平性」が論点となっているとしている。

時事通信は、「安倍晋三への忖度が働いたかどうかが焦点となっている」とし、森友学園への国有地格安売却問題と同じ構図があると評した。

東京新聞は社説で「首相と学園との親密な関係が学部新設に影響しなかったのか、国会が追及するのは当然だ。野党側は首相に「印象操作」などと言われてもひるむことなく、国政の調査という国会の責務を国民の代表として誠実に果たしてほしい。」と論じた

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