ニュース

矛盾に満ちた 自民党9条改憲提案に書かれていること

2018年5月1日の「新しい憲法を制定する推進大会」で配られた、自民党憲法改正推進本部作成の文書には次の趣旨が明記されていた。

憲法9条2項は、「戦力の不保持」と「交戦権の否認」を規定しているが、この条項の下で、冷戦による国連の機能不全に直面したわが国は、現実的対応として①「専守防衛」の枠内で自衛隊を創設し、②国際貢献においても、憲法の枠内で武力行使を伴わない支援活動に自衛隊を活用してきた。この自衛隊の活動は多くの国民の支持を得ている。

他方、自衛隊を違憲という学者等は多く、改憲により自衛隊憲法に位置付け、違憲論は解消すべきである。現行の9条1項2項およびその解釈(専守防衛)を維持した上で、自衛隊憲法に明記し、自衛権にも言及すべきである。条文の素案としては、「の平和と独立を守り及び国民の安全を保つために『必要な自衛の措置をとり』そのための実力組織として『自衛隊を保持する』とする。

しかし、これは矛盾に満ちている。

第1に、これまで「専守防衛の枠内で武力行使を伴わない国際貢献に自衛隊を活用してきた」と言うが、まず、イラク戦争時の米軍の空輸とアフガニスタン戦争時の米軍への給油は、自らは引き金を引かなくても、米軍の武力行使との一体化そのものである。さらに、2015年の新法で、「存立危機事態」か「重要影響事態」だと政府が認定したら海外派兵ができるようになった。これらは専守防衛の枠内と言えるのか?いずれも無理であろう。

第2に、「専守防衛を維持した上で自衛隊と自衛権を憲法に明記する」と言うが、これまでは「必要『最小限』の実力」だから合憲だとしていた自衛隊を単に「必要な自衛の措置」と再定義(拡大)することの、どこが現行解釈の維持なのか?明白なである。

このように、最近の政府自民党には、主権者国民を「愚民」扱いするような、見え透いたで世論を誘導しようとする立論が多過ぎる。

むしろ、2012年に公刊された自民党改憲草案のように、独立主権国家らしく「国防軍」と「自衛権」の明記を主張する方が分かりやすく、反対論者とも議論が噛み合うはずだ。


トップ   編集 凍結解除 差分 履歴 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2018-05-17 (木) 10:32:46