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情弱

情弱(じょうじゃく)はもともと「情報弱者(じょうほうじゃくしゃ)」の略称だが、この意味で使われることは少なく、インターネット上などでは別の意味で用いられることが多い。

本来の用法

近年の急速なIT化に伴い、デジタル技術や通信インフラを利用できる者と利用できない者で情報格差が生じるようになった。情報弱者とはその後者である。自動車中心社会において、さまざまな理由で移動を制約される人を「交通弱者」と呼ぶがその情報インフラ版である。

様々な理由から、パソコンインターネットをはじめとする情報・通信技術の利用に困難を抱える人がいる。この状態を放置すると、情報技術を活用できる層と情報弱者の間に社会的・経済的格差が生じ、あるいは格差が拡大していくことが予想される(デジタルデバイド)。

具体的には下記の状態にある人が該当するものとされる。

  1. 情報機器を使用できない者(低所得者や高齢者、視聴覚障害者など)
  2. 情報インフラが整備されていない環境にある者(都市からの遠隔地や離島の住民、発展途上国の国民など)

これら情報弱者を生まないためには、下記の取り組みが必要である。

  1. 教育や収入などの社会的階層によらずに情報技術を利用できる環境作り
  2. 体に障害がある人たちに対する取り組み(情報のバリアフリー化)

前者では、公共の場所(図書館など)に誰でも自由に使える情報端末を整備したり、安価もしくは無償で提供される教育機会として講習会を開催する等があげられる。後者では、視聴覚が不自由な人でもアクセスしやすいWebページの作成や機器の開発が必要である。

情報へのアクセスには通信インフラが重要な役割を果たすため、通信事業のユニバーサルサービス(全国均一のサービス)を維持したり、発展途上国の通信インフラ整備を援助することも、情報弱者を生まないために重要な点とされている。ちなみに、2000年7月の九州・沖縄サミットではデジタルデバイドが議題に挙げられ、情報弱者への支援とデジタルデバイドの克服が重要課題とされた。

ネットで多用される用法

ネットでは、本来の意味と異なり「情報を充分に活用できない者」という意味合いで使用されることが多い。この用法によれば、ITインフラを活用して情報を入手しているからといって情報弱者ではないとはいえない。たとえば、インターネットで得た情報をろくな検証も無しに鵜呑みにする者は、旧来のメディアからの情報を鵜呑みにする者となんら変わらない。

インターネットは得られる情報量が旧来のマスコミ等古くからのメディアと比べ著しく多いため、当然のことながらそれに比例して事実に基づかない虚偽の情報も多い。加えて、現段階では、匿名性という問題もてつだって旧来のマスコミよりも虚偽の情報の割合も高いという認識が一般的である。

この用法での情報弱者とならないためには、一次情報を確認する努力や、幅広い情報源に接し様々な経路から情報を得る努力、およびメディアリテラシーの能力が重要である。

自分にとって都合が良い情報だけを積極的に取り入れる行為は自らを情報弱者に貶める行為であると言える。しかし、人間という生き物は元来面倒なことを嫌い、自分の思いたいように事実を捉えたがる、という性質が備わっているだけに、「情報弱者にならないためには、己の性(さが)を克服しなければならない」という難しい問題を孕んでいることも否定できない。

なお、やや違った用法として、「祭り」に乗り遅れる者、情報の変化についていけない者を情報弱者と呼ぶこともある。さらに「その程度の事も自分で調べられないのか」「こんな事も知らないのか」「こんなを信じているのか」という含みを持たせた一種の侮蔑語としても使用される。使用例としては「情報弱者乙」、「情弱乙」等。


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Last-modified: 2019-12-26 (木) 15:47:33