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誰が納得するのか “佐川宣寿証言”幕引きどころか完全墓穴<上>

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そんなに安倍晋三官邸が怖いのか、芝居じみた与党質問とどうしようもない佐川宣寿証言

世間の関心を集めた2018年3月27日の証人喚問はとんだ猿芝居だった。森友学園への国有地貸与と売却に関する財務省の決裁文書改ざん問題をめぐり、改ざん当時の理財局長だった佐川宣寿に対する証人喚問は、真相解明とは程遠いゼロ回答。完全に肩透かしだった。

佐川宣寿は衆参両院の予算委員会で4時間超の尋問を受けたが、改ざんに関わる質問には一切応じずじまい。焦点は改ざんを知っていたか、誰がどのような動機でいつ誰に指示したのか、改ざんの目的は安倍晋三夫妻についての記載を削除するためか――だが、佐川宣寿は「刑事訴追の恐れ」を50回以上も連発して証言を拒否。改ざん前の決裁文書に記載された安倍昭恵の名前を見た時の印象さえ答えなかった。

ゼロ回答の流れをつくったのは、金子原二郎に続いて尋問に立った自民党の丸川珠代だ。

佐川宣寿、あるいは理財局に対して安倍晋三からの指示はありませんでしたね」「安倍昭恵からの指示もありませんでしたね」「官房長官、官房副長官、総理秘書官からの指示はありましたか」「麻生太郎からの指示はありましたか」などと矢継ぎ早に質問を浴びせ、佐川宣寿から6連発の「ございませんでした」を引き出した。打ち合わせでもしていたかのように、息がピッタリとあった絶妙な掛け合いだった。

元経産官僚の古賀茂明はこう言う。

「予想されたことですが、自民党側は佐川宣寿の証言をうまく使って、安倍晋三夫妻や官邸の関与はなかったという印象づくりに成功したと思います。丸川が安倍晋三、官房長官、財務相の指示がなかったかと畳み掛け、否定答弁を引き出す“あうんの呼吸”でうまくやりました」

あまりにもミエミエの稚拙で異様な口封じと与党のヤラセ質問の数々。多くの国民がげんなりし、「ここまでやるかよ」と驚愕している。

こんな子供だましで官邸と安倍昭恵の関与を否定して、いよいよクロは決定的

佐川宣寿の証言は矛盾だらけだ。

改ざんに関する尋問には「いつ、どのように認識したかにつきましてはが捜査の対象であり、刑事訴追を受ける恐れがございますので答弁を差し控えさせていただきたい」の一点張り。それでいて、疑惑のド真ん中にいる安倍晋三夫妻や官邸の関与については「安倍晋三安倍昭恵の影響というのがあったとは全く考えていません」「官房や官邸などからの指示はございません」「理財局の中で対応したということであります」などと全面否定する証言を繰り返し、官邸と安倍昭恵を徹底的に守る姿勢を貫いた。

「行政の信頼を揺るがすようなことになりまして、本当に国民の皆さまに大変申し訳ないと思っております」とは口先ばかり。国会国民を愚弄するにも程があるが、子供だましの無理筋でボロを出さないのは至難の業だ。

「森友問題に関する安倍晋三答弁の作成に財務省が全く関わらないという状況はあり得ません。佐川宣寿安倍晋三や官邸からの指示、協議、相談の類いはなかったと証言しましたが、理財局の起案を課長が官邸に届けるとも話していた。当然ですが、答弁のすり合わせはしっかり行われていたということを示唆しています」(与党関係者)

佐川宣寿がたびたびヘルプを出した補佐人の熊田彰英にしたって、安倍晋三政権との距離の近さを指摘される人物だ。

野党議員から「補佐人の方はこの事案にあたって与党関係者や政府関係者との接触はありましたか」と問われた佐川宣寿は返答に窮し、熊田に助言を求めた。そして、ようやく口にしたのが「ないということです」のひと言。語るに落ちる。

熊田は京大法卒の元検事で、法務省刑事局や東京地検特捜部で勤務。手堅い仕事ぶりで評価されていたという。2014年に弁護士に転身し、小渕優子の政治資金規正法違反事件、甘利明の口利きワイロ疑惑などを担当し、不起訴に持ち込んだ腕利きである。

安倍晋三官邸の関与への疑惑、不信は高まる一方だ。

偽証、矛盾のオンパレード。専門家が指摘する茶番答弁の数々

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佐川宣寿は補佐人の熊田にたびたびヘルプ要請

「総括的に見て疑惑が深まるだけの茶番劇だったと言わざるを得ない」

2018年3月27日の証人喚問を見た元検事の落合洋司は、佐川宣寿証言をこう切り捨てたが、これがまっとうな見方だろう。

「一貫して主張していたのは、土地取引は不動産鑑定に基づいていて何の問題もなく、政治家の圧力もなかったが、決裁文書の改ざんが起きた。当時の担当局長として頭を下げるけれども、刑事訴追の恐れがあるから何も答えません、という姿勢です。要するに(私には)改ざんする動機はないとほのめかしつつ、刑事訴追の恐れがあるから答えませんと。全く支離滅裂でしょう。その一方で、安倍晋三安倍昭恵、官邸らの関与については〈なかった〉と言い切っていた。こうした佐川宣寿証人の姿は、国民から見れば〈どれほどヤバいことをやっていたのか〉と思ったのではないか」(落合洋司)

佐川宣寿は他にも、国有地売却当時の理財局長だった前任の迫田英典から「一切、引き継ぎを受けていない」と言いながら、「安倍晋三、官邸の指示はなかった」と断言。過去の答弁で森友問題の「関係資料を勉強」し、安倍昭恵らの関与も「影響もなかった」と強調する一方で、関係資料に目を通した時期さえも証言拒否していた。

「偽証」の疑いが浮上したのは共産党の宮本岳志が尋問に立った時だ。2017年2月の衆院予算委で「交渉記録は廃棄した」との答弁の真偽を追及され、「財務省の文書管理規則を理財局に確認した」なんて苦し紛れの言い訳をしていたのだが、当時、理財局長だった佐川宣寿は宮本に対してこう言っていた。

〈財務局と学園側の交渉記録につきまして、委員からのご依頼を受けまして確認しましたところ、近畿財務局と森友学園の交渉記録というのはございませんでした〉

依頼を受けてわざわざ「確認」したという答弁は何だったのか。もはや佐川宣寿証言は「完全墓穴」。この政権のオシマイも近い。

落ち目の政権のために佐川宣寿が罪を背負う理由と浅はかさ

「どういう経緯で、誰が指示したのか答えていないので(真相は)明らかになっていない。それはまあ、まさに裁判で……」

佐川宣寿の口からそんな言葉が漏れたのは、4時間にも及ぶ証人喚問が終わりに近くなった頃だった。おそらく今後の刑事訴追を覚悟している本音が思わず漏れたのだろうが、理解不能なのは今の安倍晋三政権に果たして、そこまで忠誠を誓う必要性や価値があるのかということだ。

安倍晋三政権は今や内憂外患の極みだ。裁量労働制拡大をめぐる厚労省のデータ捏造や、今回の決裁文書改ざん国民の信頼はガタ落ち。外交でも、北朝鮮問題では米朝急接近でカヤの外だ。「100%共にある」と持ち上げてきたドナルド・トランプ政権には、鉄鋼、アルミの追加関税を適用される始末。アベノミクスの頼みの綱である株価も2万円割れ寸前で、政権末期のニオイがプンプンだ。

佐川宣寿は淡々と事実を話せばよかったのに〈責任はひとえににあります〉と強調。問題をすべて理財局に押し込んで、官邸や財務省幹部に火の粉が及ばないようにした。罪を背負って安倍晋三政権に恩を売れば、最後は守ってくれると踏んでいるのでしょう。役所を辞めても安倍晋三政権への服従意識が染みついている。政権擁護と自己保身がミエミエで、“佐川宣寿バッシング”が再燃することになる。実に浅はかだったと思いますね」(政治評論家の森田実)

たとえ世論批判を浴びても今さえ我慢すれば、退職金ももらえるし、新たな天下り先も確保できるかも――。そんな思惑なのかもしれないが、日本の憲政史上、最低、最悪と言われる政権のために「魂を売った」と言われても仕方がない。


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Last-modified: 2019-10-28 (月) 12:17:53