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佐川宣寿喚問ことごとく証言拒否「刑事訴追の恐れ」30連発<上>

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安倍昭恵の喚問がいよいよ必要

「捜査対象であり、訴追を受ける恐れがあるので答弁を差し控えたい」――。

大注目の証人喚問は、ド頭から“証言拒否”だった。森友学園への国有地貸与と払い下げに関する財務省の「決裁文書」改ざん問題。2018年3月27日午前、当時理財局長だった佐川宣寿(60)が参議院で証人として尋問を受けたが、「刑事訴追の恐れ」を連発。肝心なことは、ことごとく証言を拒否した。その数、30回近く。

「書き換えは理財局の中だけで対応した」として、安倍晋三官邸の指示はなかったとも断言。安倍晋三安倍昭恵麻生太郎の指示についても明確に否定した。安倍晋三が「が関わっていたら総理も国会議員も辞める」と発言した件が答弁に影響したかどうかについても、「あの安倍晋三答弁で私が答弁を変えたという意識はない」と明言した。

佐川宣寿は最後まで安倍晋三夫妻を“忖度”した格好だ。森友疑惑の真相はまったく説明されず、ますます安倍昭恵の証人喚問が必要となった。

午前9時前に国会に到着した佐川宣寿は、前を向き、堂々とした歩みで自信ありげな表情。参院の予算委員会室の証人席に座った後も正面を見据え、緊張した面持ちながら、落ち着いた様子だった。

証人喚問は定刻の午前9時半に始まった。自民党の金子原二郎の「本人ですか」という確認に、佐川宣寿は「はい。そうであります」とハッキリと答え、宣誓書への署名、押印にも動じることはなかった。

■矛盾次々 喚問は、金子の尋問からスタート。決裁文書の改ざんを「知っていたのか」「誰が、いつ、どのような動機で行ったのか」と問われると、佐川宣寿は「私は現在、捜査を受けている身。訴追の恐れがあるので答弁を差し控えたい」と証言を拒否した。

一方で、「理財局長の職にあった者としての責任」を問われると、「国会で大きな混乱を招き、行政の信頼を失う事態となったことについて、誠に申し訳ない」「当時の理財局長として責任はひとえに私にある」と頭を下げて謝罪。14件300カ所にわたる広範囲な文書改ざんを「理財局だけで判断したのか」「財務省幹部や政治家の関与はなかったのか」という問いに対しても、「国有財産の個別案件で、理財局の中で対応した」「財務省の官房部局や安倍晋三官邸には報告していない」と証言し、安倍晋三官邸や自民党がしきりに流してきた“佐川宣寿悪人説”“理財局単独犯説”を肯定した。

最初から最後まで、「刑事訴追の恐れ」という証言拒否とともに、「安倍晋三安倍昭恵の関与はなかった」というフレーズが際立った証人喚問だった。

安倍晋三や官邸の関与を打ち消す“ヤラセ質問”に終始

真相解明には程遠い、全く無意味の30分間だった。証人喚問の質問のトップバッターに立った自民党の丸川珠代。最初こそ、「誰がどのように(改ざんの)指示をしたのか」とただしたものの、持ち時間の大半を安倍晋三安倍昭恵、官邸などの関与はなかった――との証言を引き出す“ヤラセ質問”に終始した。

佐川宣寿も肝心の改ざんについては「刑事訴追の恐れがあるので」と証言拒否を連発しつつ、「安倍晋三の指示は」「安倍昭恵の指示は」「安倍晋三秘書官からの指示は」「官邸からの指示は」などと問われた時だけは自信タップリの表情で「ございません」と断言してみせた。

国有地の貸し付けや売買をめぐる安倍晋三安倍昭恵の影響についても「一切ございません」と言い、さらに財務省の決裁文書の中に記されていた「特例的」「特殊性」の意味を問われると「本省の特例承認(の意味)」と答えた。

一方、財務省と森友の間で事前の価格交渉は一切ない、とした過去の国会答弁については「路線価や公示価格といった話をすることはあるが、最後は不動産鑑定価格によって決まるという答弁(であり)今でもそういう意味では正しかった」と説明。交渉記録をすべて廃棄した、との当時の虚偽答弁についても「財務省の取り扱い規則について申し上げた(だけだ)」と弁解した。

安倍晋三の「総理も議員も辞める」発言で答弁を変えたつもりはない

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丸川に続き、野党のトップバッターとして質問に立ったのは、民進党の小川敏夫だ。小川の質問に佐川宣寿安倍晋三の国会答弁の打ち合わせに加わっていたことは認めたが、「安倍晋三の答弁は基本的に私の答弁の範囲内」と述べた。佐川宣寿は時折うなずきながら、小川の質問に耳を傾けていた。

小川が最も質問時間を費やしたのが当時、安倍昭恵付職員で籠池泰典の要望を仲介した谷査恵子と財務省理財局の国有財産審理室長だった田村嘉啓とのやりとり。

田村に国有地売却の要望をつづった籠池泰典からの手紙のコピーが渡っていないかと再三、確認したが、佐川宣寿は「田村を呼んで確認したが、谷とは電話の受け答えをしただけと聞いた」と答えるのみ。

2016年3月15日に財務省の本省で籠池泰典夫妻と田村との面会時の録音テープに残っていた、籠池泰典が「安倍昭恵の方からも聞いてもらったことがある」との発言についても、「(理財局長)当時は知らなかった」とシラを切った。

2017年2月17日の衆院予算委で、安倍晋三が「私や妻が関わっていたら首相も国会議員も辞める」と答弁したことの影響も問いただしたが、佐川宣寿は「安倍晋三答弁の前後で(自分の)答弁を変えたという認識はない」と言い切った。結局、新事実は何も引き出せず、“国会の鬼検事”の異名を持つ小川の追及は完全に不発に終わった。

安倍昭恵に関する尋問は断固拒否

公明党の横山信一による尋問は、重複に終始。鋭い質問はゼロだった。

委員会室の雰囲気がガラリと変わったのが、森友問題を厳しく追及してきた共産党の小池晃が尋問に立ってからだ。与党議員相手にはよどみなく答弁していた佐川宣寿だが、「刑事訴追の恐れがあるため答弁を差し控えたい」と繰り返したため、小池が異議を唱え、審議は2回ストップ。佐川宣寿が補佐人に助言を求めるシーンが2回見られた。

小池が「2017年3月1日と2日、(近畿)財務局による森友学園訪問について6回聞いて、(佐川宣寿は)6回否定した。しかし、改ざん前の文書にはハッキリ(訪問した事実が)書いてあった。答弁に丁寧さを欠くどころか、正反対のことを答えた。なぜか」と詰めると、補佐人にヘルプ。結局、「私自身が書き換えの経緯をいつ認識したのかに関わる経緯なのでお答えは差し控えたい」とトボケた。

委員会室が騒然としたのは安倍昭恵に関するやりとりだった。改ざん前文書には安倍昭恵の記述が5カ所ある。小池から「安倍昭恵の名前を見たのはいつですか?特別なことだという感じを持ちませんでしたか?」と問われた佐川宣寿はこう突っぱねた。

「ご質問の趣旨は決裁文書をいつ見たかとおっしゃっていますのでね、先ほどから申し上げている通り、書き換え前の文書と書き換え後の文書をどの時点で見たかということになりますので、その点は先ほどのご質問と一緒だというふうに理解しています」

安倍昭恵に関する質問には断固応じないという態度だった。


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Last-modified: 2019-10-28 (月) 12:18:53