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安倍晋三、答弁四苦八苦 参院予算委集中審議

野党「そんたく」猛攻

学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書改ざん問題で、安倍晋三は2018年3月19日の参院予算委員会集中審議で自らの関与を改めて否定した。だが改ざんが誰の指示で、なぜ行われたかはこの日も解明されなかった。野党は改ざん当時の財務省理財局長だった佐川宣寿のほか、安倍晋三の妻安倍昭恵らの証人喚問が必要だとさらに攻勢を強めている。

野党が国会審議に復帰した後、初めて安倍晋三と本格質疑を行った集中審議。野党側は、(1)文書改ざんが行われた理由(2)国有地が大幅値引きされた理由--に、それぞれ「そんたく」があったのではないかと疑って追及した。

改ざんについて、安倍晋三自身の指示や安倍昭恵の関与は否定したが、「書き換えた本人でなければ(改ざんの理由は)答えようがない」と強調。改ざん前の文書で安倍昭恵に関する記述はごくわずかだった▽安倍昭恵以外の政治家の記述も等しく削除された--などと指摘し、「の関与が全くなかった証明だ」と訴えた。

世論の批判を意識し、そんたくの有無はひとまず棚上げして、自身安倍昭恵の関与を否定することを優先した形だ。しかし民進党の大野元裕らは「(書き換え前の文書に)安倍昭恵の名前があるのは、『役人がそんたくした』と考えないのか」などと疑問視した。

2017年の国会では、安倍晋三は「そんたくが働く余地は全くなかった」「そんたくがないのは明らか」と主張。そんたく「される側」の安倍晋三が「する側」の官僚らの心中を断言したことで、野党がかえって疑念を深めた経緯があった。だがこの日の安倍晋三は「は当時、理財局長らの答弁を聞いて紹介しただけだ」と責任転嫁のような釈明を展開した。

また共産党の小池晃は、決裁文書に安倍昭恵の名前が載った理由をただした。太田充は「安倍昭恵だということで(記載された)」、安倍晋三も「でなければ当然載らない」と答えた。委員会室はどよめき、小池は「重大な発言だ。安倍昭恵国会議員以上に配慮しなければならない存在だから文書に登場したということだ」と強調した。

一方、国有地の大幅値引き自体を巡るそんたくの有無も問われた。安倍晋三は「書き換え前の文書を見れば、安倍昭恵が国有地払い下げや学校認可に関与した事実はない」と述べ、直接的な働きかけが書き換え前の文書に記されていない点を強調してみせた。しかし野党は、国有地を格安で売却した背景に安倍昭恵への「配慮」があれば、広い意味での関与に当たると指摘。共産党の辰巳孝太郎氏は「問題の核心は貸し付け契約だ。(森友学園との協議は)打ち切りの方向だったが、籠池泰典が1枚の写真を出して一変した」とし、籠池泰典夫妻と安倍昭恵が一緒に写った写真を示した。

改ざんされた特例承認の決裁文書によると、写真は籠池泰典夫妻と安倍昭恵が2014年4月25日に国有地を視察した時のもの。籠池泰典が「安倍昭恵から『前に進めてください』とのお言葉をいただいた」とこの席で発言したことも含めて、文書から削除された。

結局協議は延長され、最終的に契約が結ばれた。辰巳は「安倍昭恵の関与は明確だ」と迫ったが、安倍晋三は「安倍昭恵は『前に進めて』と指示する立場にない」などと否定した。こちらもそんたくの有無についてはあいまいなままだった。

官邸報告、詳細語らず

集中審議では、安倍晋三が文書改ざんの「疑い」について、2018年3月6日の時点で報告を受けていたことも焦点になった。

国土交通省から2018年3月5日に通報を受けた杉田和博は、財務・国交両省に徹底調査などを指示したとしているが、安倍晋三は2018年3月19日の予算委で「そうした動きについて、2018年3月6日に杉田から秘書官経由で報告があった」とだけ説明。報告の詳細や、安倍晋三がその時どこまで改ざんを疑ったかは判然としなかった。

安倍晋三は杉田からの報告について「は必要な指示を行ったと認識した」とした。だが共産党の小池は財務省が2018年3月8日の参院予算委理事会に改ざん後の文書だけを示す「ゼロ回答」だったことを指摘し「誠実な対応とは思えない」と批判。安倍晋三は「判断は財務省が行うことであり、たちがそれを乗り越えて確認できない」と責任回避を図ったが、小池は「財務省国民を欺いた。それを黙認した安倍晋三責任は重大だ」と反発した。

2018年3月8日の財務省の対応を巡っては、公明党の矢倉克夫も「与党にも情報が入ってこなかった。国民軽視だ」と指摘した。

また野党は、財務省が2018年3月5日に改ざん前の文書の写しを受け取っていたにもかかわらず、2018年3月11日まで麻生太郎に報告していなかった点も追及。財務省の矢野康治は杉田から2018年3月5日に電話で指示を受け、理財局に真偽の究明を求めたと説明した。

太田充は「大臣に報告しなかった責めを負うのは私だ」と認め、「国交省から貴重な情報をいただいたが、それは一つの情報だ」と述べるにとどめた。

だが、2018年3月6日には菅義偉にも報告が上がっている。民進党の大野は、政権中枢のうち麻生太郎だけ報告が上がっていない状況に「全く納得できない。監督責任を負わないのは不誠実だ」と辞任を迫った。

自民、財務省に矛先

2018年3月19日の参院予算委員会で、質問に立った2人の自民党議員は露骨な財務省攻撃を展開する一方、安倍晋三を擁護した。決裁文書改ざん問題は財務省に原因があると位置付け、「財務省安倍晋三政権の足を引っ張っている」構図を印象付ける狙いだったようだ。

こうした姿勢は自民党全体に共通している。二階俊博は2018年3月19日の記者会見で「緊張感が欠けているのではないか。国会に携わって短くはないが、こんなことはかつてなかった」と財務省を批判した。

予算委で最初に質問した青山繁晴は「奇っ怪な書き換えの背景に、財務省が国会を軽視し、その場を乗り切ればいいと思い込んできたことがあるのではないか」と切り出した。「明らかな犯罪だ」と強調した青山は、国税庁を「歳入庁」に再編し、財務省と切り離す改革構想を提案した。

次に質問した和田政宗も「徹底的に質問していく。も猛烈に怒っている」と同調。改ざん前の文書の内容について「全く問題ない文書」と評価し、「書き換えによってどれだけ国民を怒らせ、国会を空転させたか」と質問を財務省批判に転じさせた。

和田は「政府・与党としては、書き換えを許してしまった部分は反省しなくてはいけない」との姿勢も示した。その上で「党や官邸が徹底調査を指示して隠蔽(いんぺい)の扉をこじ開けなければ財務省内部で完全に隠されていたかもしれない」と指摘。政権が自浄作用を発揮したとの認識を示した。「これは政治と官僚の戦いでもある」とも語った。

一方で安倍晋三への擁護が目立った。自身や安倍昭恵が関与していれば辞職するとの答弁を2017年2月に行った安倍晋三について、和田は「これだけの気概を持った政治家がどれだけいるだろうか」と称賛。「その覚悟がほめられるなら分かるが、批判される意味が分からない」と正当化した。官僚による過度の「そんたく」など「政と官」の関係を問う議論は乏しかった。

公明党財務省を批判しつつ、安倍晋三に苦言を呈することで世論の批判回避を試みた。矢倉克夫は「問われているのは単なる情報管理ではない。役所にそんたくと疑われる文化があるのは否定できない。行政の客観性、中立性の維持にリーダーシップが必要だ」と安倍晋三に対応を求めた。


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Last-modified: 2018-05-04 (金) 13:26:32