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完璧

「完璧という言葉がやたら乱発されるのは完璧になれないことを分かっているからこその照れ隠しなのかもしれない。」
    ~ 完璧 について、オスカー・ワイルド

「余の辞書に不可能という文字はないが故に完璧ではない」
    ~ 完璧 について、ナポレオン・ボナパルト

完璧(かんぺき 英:perfect)とは、完成度が異常なまでに高すぎるため、なにか付け加えることもできず、茶化すこともできない、非常に面白みのない存在である。

概要

完璧と呼ばれる人間や物に対して、面白みのなさや詰まらなさを感じたことはないだろうか?

本来、この世で完璧といえる存在など片手で数えるほどしかないのだが、そんな中で完璧といえるものがやたら多いのは、本当は完璧とはほど遠い存在にあるにも関わらず、欠点として指摘されそうな部分を予め理論武装によって過剰防備しているからに過ぎない。昔から理論武装が影で笑い物にされることはあっても、笑える存在であったことはないことはいうまでもないだろう。

このことからいっても、世間一般で完璧と言われる存在が、どれだけ笑いや面白みという要素を自ら否定してきたことが分かって頂けると思う。完璧自体は決して悪いことではないが、完璧に固執しそれを周囲に認知させようという行為が笑われることから離れようとするあまり、影で笑われる存在になることは皮肉以外のなにものでもない。

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ご覧のように完璧過ぎる人間は詰まらない。

語源

その昔、中国の楚というに住む和氏というが、山の中で偶然、素晴らしい宝石の原石を見つけ出す。これを王に献上すれば、さぞ褒美が貰えるだろうと目論んだ和氏は、下手に素人が手を出して台無しにしてはたまらんということで原石のまま献上するが、これが全ての誤りの始まりだった。受付の、目利きもなければ気もきかない下っ端役人は原石の価値に気づかず、褒美どころか、こんな石ころを献上するとは不届き千万とばかり、として和氏に鞭打ちやら木馬責めやらの拷問を加えたあげく、とどめの一撃とばかり彼の片足を切り落としてしまう。

ところがこの和氏、自分も気づいていなかったのか、この拷問がきっかけでドMとしての性癖に目覚めてしまうことになった。もちろん当時の中国SMという文化が存在するはずもなく、酒場や近所に人間相手に喧嘩を売っても、あの拷問ほどの激しい責めは味わえない。といって、破落戸などに喧嘩を売れば、今度はを落とすようなことになりかねない。仕方なく和氏は、あの拷問三昧を反芻しつつ悶々とした日々を過ごすしかなかった。

それから何年か経った頃、楚の王が死亡し、新たな王が即位する。これはいい機会だとばかり、和氏は再び例の原石を献上することで拷問責めしてもらおうと目論んだ。案の定、下っ端役人というのは目利きもなければ気もきかないと決まっている。またもや、こんな石ころを献上するとは不届き千万と、和氏をたっぷりと拷問にかけたあげく、残されたもう片足も切り落としてしまう。日常では味わうことのできない拷問三昧に満足し、歓喜に顔を歪ませて帰った和氏。その後路、両足を失い歩く事すらできなくなった和氏はますますそちらの世界にのめり込んでいったのだが、やはり日常生活ではあれほど激しい責めを味わうこともできず、再び悶々とした日々が続くことになる。

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璧の原石。これを丁寧に研磨することで璧が完成する。

時は流れて、再び楚の王が死亡し、新たな王が即位する事になった。これを待ち望んでいた和氏は、今度はどこを切り落としてもらえるのだろうかと期待に胸を膨らませて三度拷問して貰おうと例の原石を献上しようと役所へに向かったが、ところがどっこい今度の役人は多少目利きもあれば気もきいていた。物は試し、騙されたと思って然るべき職人に原石を預け磨かせてみると、なんと、これまで見た事もないほどの美しい璧が完成した。もちろん、これほどまでに見事な璧を献上されて喜ばない王はよほどの馬鹿か変わり者だが、この時の王は馬鹿でも変わり者でもなかった。大喜びの楚王はこの璧をの宝にすると共に、和氏に対しても充分すぎる褒美を与えたのだった。

もっとも肝心の和氏にしてみれば、期待していた拷問責めを味わう事ができないどころか、肝心の原石が磨かれ璧ができあがってしまったことによりもう同じ手で拷問にあう事もできなくなってしまい、悔やんでも悔やみきれない結果に終わってしまった。失意の和氏が、その後どうなったかは、文献には残っていない。

このように完全な璧ができあがってしまうと、それ以上何も楽しむ事ができなくなってしまうことから、完成してしまったり完全すぎたりして面白みがない・楽しむ余地が残っていないもののことを「完璧」と呼ぶようになった。

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代表的な璧。最近は女性にも人気である。

実際の完璧

世の中を見回してみれば、完璧と呼ばれる物や人間が面白みの欠ける存在であることは分かってもらえるだろう。完璧とはやや異なるが、堅物や真面目すぎるが詰まらないことからも明かである。

落語や漫才といったお笑いの世界でさえ、完璧すぎれば面白みが半減してしまう。落語なら客層によってマクラを変える、漫才やコントなら滑る咬むというトラブルをアドリブでプラスに変えるという技術なしでは成り立たない。技術があるだけの人間は巧いとは呼ばれたとしても、決して名人とは呼ばれることはなく、名人と呼ばれるほどの人材ほど、敢えて客に窮屈な思いをさせないために、敢えて失敗をやらかすなどの離れ業をやってのけていることからも分かってもらえるだろう。 これは、頭の固い百科事典の内容が完成に近づけば近づくほど面白みが無くなっていくことが見て分かるように、今更いう必要のないことだ。

後日談

時は過ぎて、この和氏の璧を趙の惠文王が手に入れた。これを聞きつけた秦の昭王。昔から権力者というのはその真価もよく分からないものでもとにかく手元に置かないと気が済まないコレクターが多かったが、昭王も例外ではない。なんと趙に対して15の城と交換しようと申し出た。15城といえば小国にも匹敵する程だが、当時の秦は大国故の典型的なジャイアニズム主義であり、おそらく璧を渡したとしても、なんだかんだ理由をつけて、あるいは理由をつけることすらせず、城の譲渡の約束を反故にすることは目に見えていた。しかし、断ればそれを理由に戦争を吹っ掛けられることも確実であり、趙は完全に追いつめられた形になってしまった。このような中、趙の繆賢は、自分客分である藺相如を使者として推挙する。

期待を裏切らず、藺相如は、大国である秦を相手に一歩も引かず、言葉尻をとらえたり、あげあしをとったり、璧を人質にとって脅したりと八面六臂の獅子奮迅ぶりをみせ、遂に璧の一件をうやむやにさせてしまう。

おい、完璧という割には、後からの話の方が面白いじゃねえか。

これを機に藺相如は恩人である繆賢を差し置いて、趙で高い評価と地位を与えられることになるのだが、当然これを面白く思わない旧臣は少なくない。特に体育会系である軍人にしてみれば、このように口先だけで出世した藺相如を目の敵にしており、筆頭たる廉頗という将軍は、なにかにつけイチャモンを付ける隙を伺っていた。

このことを知った藺相如は早速一計を案じる。使用人の中でも特に口の軽そうな連中を集めると、秦が趙に攻めてこないのは廉頗将軍がいるからこそ。璧の一件も廉頗将軍あってこそと、心にもないお世辞を言ってのける。当然、この噂はたちどころに広まり、廉頗の耳にも届いた。所詮体育会だけに単細胞な廉頗は、この作り話を頭から尻まで鵜呑みにして、自分を酷く恥じ入り、その足で、藺相如の家を訪ねた。もちろん、ここまでは藺相如の思惑通りだったが、ここで廉頗は想定外の行動に出た。なんと彼は裸になると、藺相如に鞭を差し出したのだ。

そう、廉頗もまたドMだったのである。

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和氏の璧を人質にし秦を手玉にとる藺相如

廉頗は藺相如のことを誤解し疎んじていたことへの、せめてもの償いとして自分の性癖を激白すると共に、自分のご主人様になって欲しいと懇願する。明らかに斜め上をいく廉頗の行動に藺相如は動揺を隠しきれなかったが、無碍に断れば、これまでの算段が全て無駄になってしまう。それほどSではない藺相如は、手抜きにならない程度に鞭をくれることにしたのだが、またもや斜め上の事態が起こってしまう。なげやり気味だった鞭の打ち加減が結果的とはいえ、廉頗のお気に入りとなってしまったのだ。以降、廉頗は10日とおかず、藺相如の元に通う様になってしまう。こんな変態プレイにつきあいたくはなかった藺相如だったが、趙軍部のトップを子飼いにできるというメリットは捨てがたく、やむなく廉頗相手のSMプレイを延々と続けることになってしまう。

この2人がSMプレイに勤しんでいる間は、秦が趙に攻め入る事はなく、後々の世では、このように危ないながらも際どいバランスをとり続ける間柄を「刎頸の交わり」と呼ぶようになった。

しかし中国人SM好きだねえ。流石西洋とは方向性の異なる拷問技術を発展させてきただけのことはある。

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Last-modified: 2019-10-29 (火) 00:47:07