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誰が納得するのか “佐川宣寿証言”幕引きどころか完全墓穴<下>

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「幕引きシナリオ」崩壊で安倍晋三支持率はさらに急落

2018年3月27日の記者会見で菅は、文書改ざんについて佐川宣寿が官邸からの指示を否定したことで、「官邸側は何もしていなかったから、(関与は)なかったということだ」としたり顔で語っていた。佐川宣寿を証人喚問に差し出すことで今度こそ森友問題の幕引きをしようと躍起だったわけだが、完全に裏目に出た。

「告発を受けている身であり、答弁を控えさせていただく」と繰り返す佐川宣寿のしかめっ面を見て、留飲を下げた国民はまずいないだろう。

政治ジャーナリストの鈴木哲夫はこう言う。

「今回の証人喚問で、〈佐川宣寿は説明責任を果たした〉と納得した国民はほとんどいないでしょう。支持率の急落は到底免れない。そもそも、最近の支持率下落は、森友問題だけが原因ではありません。1年半前には安保法を強行し、直近では裁量労働制拡大をめぐるデータ不正問題もあった。数の力で押し通す『安倍晋三1強』のおごりが積もり積もって、国民の不信感を増幅させているのです。もともと政権に肯定的な意見を持っている層からも『安倍晋三退陣』を求める声が出始めています」

そうでなくても、内閣支持率は急落している。ANNが2018年3月24、25日に行った世論調査では、32.6%に下落。先月から11.7ポイントも下げた。つるべ落としは必至で、いよいよ“危険水域”の20%台が見えてくる。

共産党の小池晃が「これでは喚問の意味がない!」と憤ったのも当然で、野党は佐川宣寿に続いて国有地売却の決裁権者だった迫田や、元安倍昭恵付で森友サイドと財務省の橋渡し役を担った経産省出身の谷査恵子、安倍晋三側近の今井尚哉の証人喚問を求めている。もちろん、疑惑の中心にいる安倍昭恵の喚問が必要なのは言うまでもない。世論も同調するだろう。そうなれば安倍晋三政権はますます窮地に追い込まれる。

それにしても佐川宣寿にここまで忖度させる狂乱政権、断末魔の異様

理財局長時代を彷彿とさせる強気の証言を続けた佐川宣寿だが、声を詰まらせた瞬間があった。立憲民主党の逢坂誠二が森友学園への国有地売却時の責任者は当時理財局長だった迫田英典だったと指摘し、「証人喚問を受けるということを理不尽だと思わないのか」「被害者に見えてならない」と迫ったシーンだ。全体の奉仕者である公僕の矜持が頭をかすめたのか。

佐川宣寿をこうまで政権忖度マシン化させた背景には、2014年に設置された内閣人事局の弊害がある。官邸が霞が関の審議官級以上の約600人の人事を握り、官僚の生殺与奪権を握っている。現実に安倍晋三政権に逆らう官僚は出世の道を断たれ、モミ手でスリ寄る人間は重宝されてきた。しかし、この問題の本質は制度自体にあるわけではない。元凶は1強におごり、人事権を笠に着た安倍晋三政権による恐怖支配だ。

「現在の政治状況は事実上の独裁が成立しています。民意のチェックを受けない独裁者が悪いことでも平然とやりたい放題やるという意味もありますが、もっと問題なのは独裁者による指示がなくても周りが意向を忖度し、勝手に動いてしまうこと。独裁者は手を染めない。だから真相が見えてこない。佐川宣寿の証言がすべて本当なら、まさに今がそういう状況であることの証しになるのではないでしょうか。安倍晋三政権の倫理観はものすごくて、決定的な有罪の証拠がない限り、何をやってもいいという感覚になっている。恐怖政治を葬り去らない限り、行政の崩壊は止まらないと思います」(古賀茂明)

公文書改ざんで民主主義の根幹を破壊し、疑惑隠しの総選挙を打った安倍晋三政権には正統性もない。究極のデタラメ政権の悪あがきをこれ以上見過ごしたら、この国は共倒れする。

盗っ人に防犯方法を聞く与党議員の劣化に国民は唖然

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文書改ざん問題を「平成の政治史に残る大事件」と評し、「真相解明に与党野党は全く関係ない」と、自民党の“エース”小泉進次郎は語っていたが、証人喚問で尋問した自民党議員からは、そんな勇ましさは全くうかがえなかった。

あろうことか、麻生太郎が「文書改ざんの最終責任者」と断じる佐川宣寿を相手に、再発防止策について“お伺い”を立てたのだ。

参院予算委で丸川は、「再発防止のために何が必要だと思いますか」「書き換えが二度と起こらないよう、再発防止に欠かせない、真相の究明に資する証言をお願いしたい」と尋ね、衆院予算委では石田真敏が「再発防止、どうやっていけばいいのか、これはみんなでしっかり考えていかなければならない課題」と神妙な面持ちだった。盗っ人に“防犯方法”を聞いているようなものだ。

そもそも、真相解明せずに、どうやって再発防止策を打ち出そうというのか。質問時間の浪費もはなはだしい。

「見当外れの質問をしたのは、〈安倍晋三自民党もしっかり調査しているぞ〉とアピールすることが目的だったのではないか。今回の証人喚問で分かったのは、真相を明らかにするには国会に中立的な立場の第三者委員会などを設置し、徹底調査するほかないということ。結局、自民党議員らが向いている方向は『国民』ではなく『安倍晋三政権』ということなのでしょう」(鈴木哲夫)

安倍晋三に対する歪んだ忠誠心から、国会でトンデモ質問をして物議を醸した青山繁晴や和田政宗。安倍晋三が敵対視する前川喜平の講演をめぐって文科省に圧力をかけた赤池誠章、池田佳隆もチルドレンだった。自民党議員の劣化に、国民も唖然とさせられるばかりだ。

今後、佐川宣寿に適用される罪状と財務省の命運

それにしてもだ。国権の最高機関である国会が証人喚問を行ったにもかかわらず、国有地の取引に関わる国家公務員の違法行為の疑いについて何ら真相解明に迫れなかったのだから情けない。こうなったら、残された手段はひとつ。今こそ司法の出番だ。

佐川宣寿証人は結局、決裁文書の改ざんも、国有地取引の経緯についても何も語っていません。(捜査中とされる)大阪地検特捜部の心証としては『相当マズイことをやっていたのではないか』と考えても不思議ではない。改ざん行為はかなり早い段階で始まり、共謀や企てがあった可能性もある。国政調査権では限界があると分かった今、世論から〈刑事司法で解明するべき〉との声が高まるのも必至でしょう」(落合洋司)

佐川宣寿は売却時の理財局長ではなかったにもかかわらず、佐川宣寿安倍昭恵は全く関係がないと言い、改ざんに関わったのは「理財局だけ」と強調していた。特捜部の捜査によって今後、佐川宣寿証言を覆すような新たな証拠が次々と出てきたら「偽証罪」で即アウト。虚偽公文書作成の罪も視野に入ってくる。

そうなれば問題は佐川宣寿個人の問題じゃ済まない。霞が関で我が世の春を謳歌していた旧大蔵省は1998年に発覚した「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」がきっかけで、金融行政部門が切り離されて現在の金融庁ができた。当時と同じで「解体論」が再燃するのは避けられないだろう。すでに今回の改ざん問題では、与野党幹部からは財務省を解体、細分化して新たに「歳入庁」の設置を求める声が公然と出始めている。

公文書改ざんという国民を愚弄する不祥事を犯しながら財務省が組織防衛に走るのであれば、国民の理解は到底得られない。


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Last-modified: 2019-10-28 (月) 12:17:37