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やむなく「佐川宣寿カード」来週にも証人喚問

政府「官僚の責任」強調

森友学園への国有地売却を巡る決裁文書改ざん問題で、政府・与党は来週にも佐川宣寿の国会招致に応じる方針に転じた。一方で麻生太郎安倍晋三へ責任が及ぶことに神経をとがらせ、あくまで佐川宣寿ら「官僚の責任」と強調。しかし行政への信頼を根底から揺るがす事態の解明が問われる中、佐川宣寿の説明次第では政権がさらに追い込まれる可能性もある。

「自分たちの答弁から逸脱がなかった、と見せるために(改ざんを)隠した。まさに財務省による、財務省のための情報操作だ」

野党5党が欠席した2018年3月14日の参院予算委員会で、自民党の西田昌司は財務省を手厳しく批判した。西田は安倍晋三と親しいことで知られる。この日の自民、公明両党は追及の姿勢を演出する一方で、「安倍晋三麻生太郎が知らないうちに、官僚が改ざんした」という政府側のストーリーを後押しする姿勢に終始した。

麻生太郎は改ざんについて「(財務省の)そんたくではない」と重ねて否定。西田は「念のため聞くが、書き換えを指示したことはもちろんないでしょうね」と念押ししてみせ、「むちゃくちゃになった官僚システムを立て直すのが、安倍晋三内閣の仕事だ」と逆に首相らを持ち上げた。

「(安倍昭恵から)『いい土地ですから、前に進めてください』と言葉をいただいた」という森友学園の籠池泰典の発言が、改ざん後の文書で削除されたことに関し、安倍晋三は「に確認したが、言っていないということだった」と反論。大半の野党が不在の中で、それ以上追及する声は出なかった。

一方、与党は佐川宣寿の招致容認へと急速に傾いた。自民党の森山裕は2018年3月14日、「必要が出てくれば協議したい。拒否しているわけではない」と記者団に明言。公明党の大口善徳も「真相解明のため、野党も審議に出てきてもらいたい」と国会の正常化を呼びかけた。

前日の2018年3月13日には、自民党の二階俊博や森山らが、大島理森と議長公邸で会談。公明党の重鎮からも事態の打開を求められていた大島が「佐川宣寿の招致しかない」と促すと、二階は「それしかないと思っていた。明日、そうした流れにする」とうなずいた。衆参両院の議長は、改ざんについて「立法府を財務省が愚弄(ぐろう)するものだ」などとする異例の抗議書も近くまとめる。幕引きを急ぐ自民党幹部は「佐川宣寿にはかわいそうだが、全部かぶってもらうしかない」と語る。

官僚の責任として収束させたい政府側も、改ざんの最終責任者と名指しした佐川宣寿の招致には「最終的に応じざるを得ない」と踏んでいた。ただしやすやすと応じれば、安倍昭恵の招致要求、安倍晋三麻生太郎の責任追及と、野党がたたみかけてくるのは必至なだけに、安倍晋三官邸は佐川宣寿の早期招致には慎重だった。

ところが、不正常な国会と世論の批判に耐えかねた与党に押し切られる形で、政府はやむなく「佐川宣寿カード」を切らされることになった。特に麻生太郎サイドは「その後」への警戒を強めており、麻生太郎派幹部は「安倍晋三麻生太郎を切れば、政権は持たない。支えているのは麻生太郎だ」と安倍晋三をけん制する。麻生太郎の心中について、周辺は「自分が辞めれば次は安倍晋三だ。袋だたきになっても守る、という考えだ」と代弁した。

ただ、佐川宣寿の招致だけでこの事態を乗り切る見通しも立たない。安倍晋三と距離を置く自民党の中堅議員は「今週末に皆が地元の空気を見れば、来週の党内はもっと悪い雰囲気になる」と指摘。首相に近い議員の一人は「もちろん麻生太郎を切りたくはないが、切れないわけじゃない。最後の、最後の、最後のカードだ」とつぶやいた。

改ざん真相迫れるか

決裁文書の改ざんについて何も語らないまま、国税庁長官を2018年3月9日に辞任した佐川宣寿佐川宣寿の国会招致がほぼ決まり、今後の審議で真相にどこまで迫れるかが焦点になる。改ざんの動機や経緯のほか安倍晋三安倍昭恵らの関与についても、野党から厳しい追及を受けるのは必至だ。

改ざん後の文書は、安倍晋三ら与野党政治家や安倍昭恵に関する記述が全面的に削除されていた。麻生太郎は2018年3月14日の参院予算委員会で「佐川宣寿の(昨年の国会)答弁が誤解を受けないように、ということくらいしか考えられない」と釈明した。

財務省太田充は文書が何回か書き換えられたと明かし、佐川宣寿の答弁に合わせて改ざんが重ねられていた、との認識を示した。ただ、その理由については「(佐川宣寿が)激しい質問に答える中で、やや雑になったのでは」「報道を前提にした議論で、誤解を受けないようにしたのだろう」と苦しい推測を繰り返した。

しかし、そもそもなぜ佐川宣寿は改ざん前の文書に基づかず、膨大な改ざんが必要になる答弁をしたのか。疑問は消えない。

2017年2月に安倍晋三が国会で「私やが国有地の払い下げに関わっていたということになれば、首相も国会議員も辞める」と明言したこととの関連を問われ、麻生太郎は「関係ありません」とそっけなく答えた。佐川宣寿が国会で、改ざんの理由についてどこまで語るかも一つのポイントとなる。

また、「誰が、いつ改ざんを指示したのか」も重要な点だ。安倍晋三麻生太郎は指示を否定しており、2018年3月14日の予算委でも「書き換えは本省理財局で行われ、外部から指示はない」(麻生太郎)「佐川宣寿の関与の度合いは大きかった」(太田)などと答弁した。野党は「官僚の判断だけで改ざんを指示することはありえない」と強く反発している。


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Last-modified: 2019-10-29 (火) 01:09:54