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森友文書改ざん 問題の本質はどこにある

疑惑の域を超え、事件の段階に入ったと言わざるを得ない。財務省が学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る決裁文書の調査結果を報告し、14文書に書き換えがあったと認めた。麻生太郎は、理財局長だった佐川宣寿が交渉記録は「廃棄した」、価格交渉は「行っていない」などとしていた国会答弁との矛盾を避けるため、理財局の一部職員が行ったと説明。事実上、改ざんを認めた。

麻生太郎は、政府や政治家への忖度(そんたく)は否定したが、削除された文言には「特殊性」「特例的」に加え、安倍晋三夫人の安倍昭恵が含まれている。現場の近畿財務局や財務省本省も安倍昭恵、さらには首相の影響力を強く意識していたことを示している。野党が追及するように改ざんは「政治的圧力の結果」ではないか。

理財局幹部や職員の処分だけでは済まされない。麻生太郎自身の進退は無論、安倍昭恵佐川宣寿らの証人喚問は避けられない。

野党が猛反発するのももっともだ。この文書が昨年5月そのまま国会議員に提示されていたなら、国会審議などで解明は進んでいたはずだ。財務省は「個人情報」として明らかにしていないが、近畿財務局の担当職員も自殺に追い込まれずに済んだかもしれない。

背景には、官邸が官僚の人事権を一手に握った結果、官僚国民ではなく官邸だけに目を向けるようになってしまったことがある。麻生太郎は否定したが、安倍晋三が発覚直後に「私や妻が関わっていたら首相も国会議員も辞める」と明言したことも影響しているのではないか。改ざん改ざんを呼ぶ異常な事態だ。

昨年夏以降、近畿財務局と籠池泰典らとのやりとりを示す音声データ、担当者と法務部門の交渉文書などが次々、明るみに出たが、財務省側は「価格交渉ではない」「相談記録だ」などと、詭弁(きべん)を繰り返してきた。国有地の貸付などは過去5年で「本件のみ」と特殊案件だったことも認めている。

「官庁の中の官庁」と表される財務省が「国民の知る権利」をないがしろにする違法行為に及んだ事態は、民主主義を根底から否定したことにほかならない。

麻生太郎は書き換えが指摘されると「捜査に影響を与える」などと、後ろ向きの答弁に終始。与党内の批判を受け、ようやく報告に至った。この間の姿勢は不誠実であり、国民不信を募らせた責任は重大だ。メディアの直近の世論調査では、7割強が財務相の辞任を求めている。

内閣支持率も下がりつつある。財務省幹部の責任で幕引きを図れば、低下に拍車が掛かり、秋の自民党総裁選での3選狙いにも陰りが生じてくるのは必至だ。働き方改革法案ではデータ問題から、裁量労働制の拡大の断念に追い込まれた。森友問題などには「真摯(しんし)に丁寧に説明する」としてきたが、その裏には改ざんが隠れていた。おごる安倍晋三1強の屋台骨が揺らぎだしたのは当然だ。


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Last-modified: 2018-05-04 (金) 15:42:46