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アホ 阿保

阿呆(あほう、あほ)とは、日本語で愚かであることを指摘する罵倒語、侮蔑語、俗語。近畿地方を中心とした地域でみられる表現で、関東地方などの「馬鹿」、愛知県などの「タワケ」、富山県などの「ダラ」に相当する。また、成績がとても悪いという意味もある

阿呆の使われる状況

阿呆は馬鹿とともに日本語の口頭語で良く使われる表現であるが、阿呆と馬鹿はまったく同じ言葉ではない。例えば、「学者馬鹿」のような用法は阿呆にはない、馬鹿を強調語として使う場合「馬鹿でかい」「馬鹿にでかい」のように言うが、阿呆を強調語として使う場合「阿呆ほどでかい」のように言う、などの用法の違いがある。

阿呆と馬鹿では受け取られるニュアンスに地域差がある。関東など「馬鹿」を常用する地域の人に「阿呆」と言うと、「馬鹿」よりも侮蔑的であると受け取られる場合がある。逆に関西など「阿呆」を常用する地域の人に「馬鹿」と言うと、「阿呆」よりも尊大に見下されたと受け取られる場合がある。

阿呆を用いた複合語としては、罵倒語には「どあほう」や「あほたれ」、「あほんだら」がある。「あほんだら」の語源については「阿呆太郎」であるとの説もあるが、近隣地域で見られる同様の罵倒語である「だら」「たくら」が阿呆と結びついたものである可能性がある。文化周圏論によれば、言葉や風習は中心で発生して周囲に広がるので、中心から遠いところに過去の状況が残される。これを当てはめると、「だら」や「たくら」は阿呆以前に生まれた罵倒語で、中心である京都周辺では廃れたものが、阿呆と結びついて残ったものと考えることができる。

そのほか「阿呆」を用いた言葉として、『広辞苑』は以下のものを挙げている(『広辞苑』では「あほう」の漢字表記を「阿房」としている)。

また前田勇の『上方語源辞典』は、「阿呆」を用いた言葉として以下のものを挙げている。

阿呆の分布状況

馬鹿と阿呆は東西の言葉の違いと考えられがちであるが、阿呆は近畿地方と四国東部(たとえば徳島県の阿波踊りの有名な歌詞「踊る阿呆に見る阿呆」など)で使われる表現であり、さらに西の四国西部や中国地方では馬鹿が使われている。もっとも、最近は上方漫才のテレビ進出にともなって、以前は阿呆を使わなかった地域でも阿呆を使うようになっている。

阿呆の発音は、京阪神では「アホ」、その周辺の地域では「アホー」である。そして最外縁の地域では「アハウ」という発音が残っている。これは文献上でも「アハウ」→「アハア」→「アホウ」→「アホ」と変化していることが知られており、この表現が京都を中心に、方言周圏論として広がっていることを示している。

視聴者参加型テレビバラエティ番組『探偵!ナイトスクープ』において、「アホとバカの境界線はどこか」という調査に端を発した本格的な調査と研究がなされており、この制作過程を記した『全国アホ・バカ分布考 はるかなる言葉の旅路』(松本修著)にその詳細な結果と考察が記されている。


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Last-modified: 2019-10-28 (月) 22:54:52